学会3日目。ホテルには幾人かが一緒であることが分かった。朝食会場で会って、話すというのはこの種の学会の旅で良くあることだ。CH大のOさんとは、久しぶりにゆっくり話せたのは良かった。東京から名古屋圏のCH大に行かれてもう20年になると言われた。管理職も経られて、確か、一昨年は英国での在外研究に行かれていたと思う。19世紀英国の労働者の生活史を論文に書かれて送っていただいた。こういう基礎的な研究をしたいと誘惑にかられる作品だった。
この日は、会場が変わって、和歌山大学生涯学習教育研究センター(旧松下会館、松下幸之助が和歌山大学に寄贈した建物)である。朝、旧友のT君も加わり、Oさんと時間待ち合わせをして、タクシーで行こうと決めていたが、T君が歩いて10分程度だから歩こうと言う。そうかな?とは思いつつ、ま、歩くのも体に良いではないかと思って同意して歩き出した。院生のF君も、そう遠くないですよと言ってスタスタ歩いて行く。されどだ。なかなかたどりつかない。結局35分ほどかかる距離だった。
会場の部屋のM君には携帯電話で連絡したが、ラウンドテーブルの時間にやや遅れることになってしまった。T君は悪いと言って、お茶を買ってくれた。(そんなに気にした訳ではない。ありがとうございます。)僕は主催者の一人で、今日は司会進行役。報告者のM君がすでに来ていて説明いただいたので、安心であった。
M君の報告は1時間ほどかかったが、皆辛抱強く聞いてくださった。M君の研究視野からの重要な提起もしていただいたように思うが、それぞれの参加者の感想は、期待も含めててであるが、少し辛口でもあった。今の社会教育の置かれている状況を踏まえると、何を研究の焦点として設定すべきか、新自由主義政策を社会教育を対象に設定して論じる場合、何が研究の「環」となるのか。労働の変容や福祉、学校教育の変容を踏まえながら、学習権保障の具体的な結節点をどこにおくかなど、あるいは外国との比較研究の重要な鍵は何かなど、自由な議論がなされ、ラウンドテーブルらしくて良かった。
僕は、終了後国際委員会に出て、ユネスコブラジル会議に向けたこの間の学会委員会の活動、草の根会議の進展状況、ナショナルレポートの文脈、シャドーレポートの状況などを聞いた。M君には少し待ってもらっていたので、中座して、ラウンドテーブルを用意した核にある社会教育と法研究会の今後の日程や課題を打ち合わせた。
終了後、今度は、和歌山大学生涯学習教育研究センター設立10周年記念フォーラム「地域生涯学習の展開と大学の役割」への参加である。
10周年記念フォーラムは、学会とのジョイント企画であり、内容はタイトルの通り、大学が地域生涯学習に対して何ができるか、あるいは何が出来てきたかの仮説と実践的検証であり、さらにはある種の和歌山大学テーゼのような宣言でもある。また、もう一方ではもやいなおし的な意味では、Y前センター長(現副学長、社会教育学会副会長)からH現センター長への10年間を終えての次の10年へのバトンタッチの意味合い、また4月から新たに加わったM准教授(前貝塚市社会教育職員)の紹介による新たな展開の意味合いもあった。また、「教職協同」をうたう意味での、職員の方々の登場もあった。こうした路線をバックアップする上で、Yさんの高校、大学時代の後輩でもあるK文科省高等教育審議官の文科省としての支援・応援の表明、高大連携を進めてきたYA和歌山県教育長(元K高校長)の連帯メッセージ、それにSA学会会長挨拶、M副会長のコメントは、国、県、学会の支援を組織してきたことをも意味した。さらに、H大のKI教授と千葉秋津台小学校の実践報告は、大学ができることの可能性と限界をも示すものであり、さすがYさんとHさんの企画、組織、宣伝のプロデユース力を示すものでもあった。報告はそれぞれに良かったが、それをどう討議させるか、あるいは会場の意見を組織するかについては、必ずしも上手くいかなかったようにも思われた。この種のシンポの限界かも知れない。
夕刻からは、第31回大都市の社会教育・研究と交流のつどい。今年は、上記の公開シンポもあったので、それにオープン参加してもらい、初日は懇親から始めることになって、「活魚料理・天海」というお店で行った。午後のゲリラ的豪雨のせいか、交通機関が遅れてしまって中途からの参加者もあったが、これは和やかな交流であった。
今回の実務全般を準備いただいたのは、仙台のIさんである。写真は、他に横浜、大阪、岡山などのメンバーの挨拶。今回は30名余の参加者であり、上記以外には、福岡、川崎、神戸、堺、名古屋のメンバー、それに研究者が千葉大、東北大、北大、北海学園大、北海道教育大、神戸大、などである。
僕の隣に座られ、声を発しておられる学芸大名誉教授のKOBA先生はお元気だ。僕の恩師、故O先生と共にこの会を立ち上げるのに尽力されてきた先生だが、今や沖縄から始まり、日本、韓国、中国をむすぶ社会教育・生涯学習の研究と実践、心と心ををつなぐ結節点に立っておられる。学派というものは、人を近づけもし、遠ざけもするが、そういうものにあまり興味も関心もない僕にとっては、KOBA先生の築いてきたものは大きいと率直に思う。
最新の『東アジア社会教育研究』13号は読み応えがある。この日、KOBA先生から購入させていただいたが、12号に続く重要な成果があるように思われた。沖縄、中国、韓国、について書き手も多彩だ。いくつか接点もあって、7月にH大で行った日韓生涯学習シンポの後で、公州大学校のヤンビョンチャンさんや福島大学のASさんは、間をおかず韓国に飛び、KOBA先生たちを迎えておられたのだ。僕はお会いしたことはないお方だが、故黃宗建先生への墓参への参加された方々の文章を読むと、その寄せられる思いの深さに感動を覚え、引き寄せられる。またその道先案内をつとめられたヤンさんのその献身的な姿には頭が下がる思いだ。
今日は、ここまでだ。明日、中国に帰国するHuang Yuさんを迎えての僕の家での送別会の準備がある。
大都市研の討議については、次回のブログに書くことにしよう。
P.S.
大学人の理性が曇るような時代に、まっすぐに目を開いて、しかも孤独にではなく共に進む人々を組織して、楽しく生きられたら良い。そんな思いを共有していた、最初の愛知の勤務校の友人のKOIkuさんが昨日、22日、癌で亡くなられたとの悲報が入った。(享年61歳)2年前に病院に見舞いにも行ったが、この日が来るのが恐かった。明日の通夜も明後日の告別式も校務で行けない。
痛切に、悲しい。
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