9月3日(木)
朝方、犬の散歩、朝食後片付けの後、午前は、院入試関連の業務の打ち合わせや新たな中国の大学との学術協定推進の資料検討を部局長と行う。
午後は、この日と翌日にかけての「地方自治と子ども施策-全国自治体シンポ2009in札幌」というシンポの全体会に出かける。札幌市と子どもの権利条約総合研究所(代表・喜多明人)との共催企画である。僕の属する札幌市子どもの権利条例市民会議(こどけん)事務局からも参加をよびかけられていて、日程調整が難しかったが、この日の午後のみ、まとまった時間が空いたので参加した次第である。
「子どものSOSと子どもにやさしいまちづくり」(原題は、Child Friendly Minds)と題した、トロント・ヴォーゲ氏(Trond Waage,ユニセフ・イノチェンテイ研究センター上級研究員)の記念講演(Key Note Speech)から企画は始まった。同氏は元ノルウエー・子どもオンブスマンの経験をもち、4人の子どもの父親であり、過去幾度か来日もされている。
詳細な内容紹介はできないが、やや強引に要旨をまとめると、以下である。
今年は、国連・子どもの権利条約制定(1989)から20周年の年である。同氏は、過去20年間の世界の変動とこの条約の精神の世界的定着(子どもの権利条約が、共通言語になってきた)を検証することから話を起こした。とりわけ、地球世界では、急激な都市化と人口増大変化、気候変動と持続的発展社会の危機、労働環境や地域社会の困難がある。世界において、子どもを生み育てる見通しが必ずしも明るいわけではない。その意味で、子どもや若者の施策を世界はどれほどに展開させてきたのかを振り返り、前進面と困難な課題の双方を総体的に把握するための鳥瞰図を、同氏は提示したといえる。その上で、今日のシンポの主題である、「子どもにやさしいまちづくり」とは何か。(The Child Friendly Citiesというコトバは、1996年、イスタンブールで開催された世界都市会議で用いられ、それ以降、この言葉を冠した運動が幅広い主体と文脈のもとに組織されてきた)、子どものための政治、変革のための政治とは何をすることかを提起した。最後に、それらを踏まえての、子ども把握の変革、学校の変革、民主主義の質的変革を、子どもを中心にすえて考え、実践的な課題を四つ程述べて話を閉じたのである。
子どもと子どもの権利をめぐる国際的なレベルでの政治的経済的文化的文脈理解とその変動動向、現代における子どもの権利条約の含意、国家と地方政府とNGOなどの責務と実践上の課題、子ども自身とそれを支える運動の担い手の努力課題など、思慮と示唆に富んだ問題提起であった。
その後、休憩をはさんで、「子ども支援・子育て支援の総合化と子どもにやさしいまちづくり-わがまちの子ども施策と首長のイニシアテイブ」という長い題名のシンポがなされた。最初の基調報告は、森田明美さん(東洋大学)、その次に北海道のこの分野での代表的な自治体首長として、上田文雄(札幌市)、田岡克介(石狩市長)、田村弘(滝川市長)、北良治(奈井江町長)、宮西義典(芽室町長)の各氏が登壇し、司会は野村武司(獨協大学)さんであった。司会の野村さんが言ったように、討議主題は、①子ども施策の総合化とは何か、②子ども施策における子どもの視点、③子どもにやさしいまちづくりとは何か、何ができるのか、の三つであった。
詳しくは、書かないが、国や道の財政的制限の中でも、市町村(自治体)の首長の主導性によって可能なことも少なくなく、住民や子どもたちの合意を生かしながら、政策的に実現可能なことが相当程度あることも重要な示唆であった。と同時に、道教育委員会との関係も含め、学校教育での合意を進める上でのいくつもの壁があることも、共通の含意であった。中には、教育長の公募提案、札幌市に続いての子どもの権利条約制定を任期中に行いたいとの決意が示される話もあった。また、子どもの権利は教え込むものではなく、共に実践を進めて行く中で試行錯誤を重ねながら、大人も、子どもも、自治体も理解を深めていくものであるとの方向が指摘されたが、重要な観点である。
会場には、幾人も見知った全国各地からの参加者や、道内、札幌市内の参加者がいた。この日は、余裕がなく、そうした人たちとのおつきあいはできなかった。
夕刻、大学に戻り、前期レポート試験の読み込み採点の地味な作業を行ったが、終わらない。幾日かかけての作業だ。
家に戻るとテレビニュースでは、NHKが短く採り上げていたが、翌朝の新聞では、講読している新聞二紙には記事はなかった。多分、地元紙には載っているのだろう。メデイアは、地元記事については、記者のセンスや情報力に依存することが多く、その意味でまだまだ感受性が鈍いと思うことが多い。
ブログにははじめておじゃまします。
今回は、自治体からの派遣だったのですが、学ぶべきことも自覚し、また全国の関係者のみなさんとつながることもでき、有意義な研究会でした。
9月3日には時間に余裕がなくゆっくりお話しが聴けず残念でした。でも、ひょんなことから5日にこどけんのみなさんと交流することができました。市民運動と条例・救済機関の活動をつないでいくことは大きな課題のようですが、元気な市民運動が存在することはうらやましいですね。
投稿情報: 大村 惠 | 2009年9 月 7日 (月) 10:24
どうもコメントありがとうございます。
あの日9月3日は、余裕無く対応できずに相済みませんでした。5日夕刻の「こどけん」メンバーの方々との交流会は、楽しかったようで何よりです。市民運動は、晴れの日も、雨の日も、曇りの日もあります。それで良いと思っています。
投稿情報: 北の光 | 2009年9 月 7日 (月) 17:08