1年半以上をかけて準備してきた第48回社会教育研究全国集会北海道集会は、3日間の日程を終えて、昨日幕を閉じた。集会終了後の実行委員会解団式、打ち上げ交流会、さらにその後の二次会、また別の集まりに出て帰宅したのは10時を超えていた。実感レベルでも、肉体的には、疲労のピークに達していると自覚されるものだった。色々なことがあったが、成功したといえるだろう。
二足のわらじの一方の(個人の心持ちでは、本来の)方に、この間、ずいぶんとエネルギーと時間を注いだわけである。にもかかわらず、担当の研究グループにおいて、この集会に関心のない学生や院生その他の面々には、余分なことをしているとの批判があるようだ。しかし、そんなことはこの際どうでもよいように思われた。やがては分かってくれるだろうと期待して結果はそうではなくて落胆するよりは、分からない人には永遠に分からないし、分かる人には分かると考える方が精神的に楽だ。自分が思うようには人は自分のことを理解してくれるとは限らない。つながりの中で、共同の力で、研究を進めようというメッセージは、個人主義、自己中心、クレーム人間には、なかなか届かない。それはそれで仕方のないことかも知れない。少しでも僕のメッセージに反応する芽が出てきた、院生の微妙な変化に期待しよう。
僕は、この集会のプロセスを通じて、人の持ち味の多様な組み合わせの妙、信頼の重層的構造というか、一つの尺度だけではない人の見方ともいうべきものに少しずつ心を開くことを習熟学習してきたといえるだろう。まだ足りないのは、たとえ正当な批判意識を抱いても、それは出さず、心にしまって、他人は違う存在であること、学ぶべきものからは学び、学びたくないこといやなことは無視する。良い面以外は、コメントしないという人間的な達観であろうか。なかなかそういう心境に至らないのは、年齢を重ねて来つつあるのに、未熟者ゆえであろう。自戒したいものである。
昨日の集会最後のプログラムで、訓子府町長の菊池一春さん、阿智村村長の岡庭一雄さんの刺激的なパネルデイスカッションがあった。思うこと多であったが、ここでは詳しくは書かない。その後で、僕は簡単な中間総括を行った。時間制限があり、すべてを話せなかったが原稿は以下のものだった。それも終わって、いくつかのクロージングプログラムが続いた。最後のセレモニーで、現地実行委員会事務局長のMさんのこの集会への思いと参加者への感謝の挨拶で、感極まっての絶句(涙)は、驚きとともに、参加者の共感を呼んだ。僕には、日頃感情抑制が強く、クールに見られがちな、彼の人間宣言にも見えて、心からおめでとうを言いたい気分でもあった。
2008.8.25
第48回社会教育研究全国集会の総括-成果と課題
1 まず参加者数です。:24日夕刻受付済み801(道内491,道外310) 、25日朝の段階では、815名+未集計15名=830人 これに学生ボランテイアと第1全体会出演者(舞台登場者、劇団、アイヌの方々)が103人、あわせて933人が、現段階の公式参加者数です。韓国からの参加者27名も加えての数ですが、933名という1000名に届こうかといい数の参加者になりました。(後に述べますが、プレ集会参加者200余名を入れますと1000名を超える数になります。)まずは、参加者数で大いに成功したことを喜びたいと思います。
なお、24日の集計では、分科会(1-24)763名(内訳、市民278:36.4%、職員251:32.9%、研究者102:13.4%、学生97:12.7%、子ども26:3.4%)
課題別集会(1-6)462名:第1:181名39.2%、第2:64名:13.9%、第3:60名:13.0%、第4:70名:15.2%、第5:37名:8.0%、第6:50名:10.8% でした。
概略評価:目標としていた800名をはるかに超える参加者数でした。最終集計を待たなければなりませんが、道内の参加者が600名弱、道外400名近くと推計されます。この集会に初めて参加した方が多いこと、職員の数がこれまでよりも増大したこと、韓国からの参加者の20名台の定着、など大きな成果でした。
2 つぎに、今年の集会の特徴です。今回の集会テーマは、「つながる力をひろげ、人が育ち合う地域をつくろう-「生きる・働く・学ぶ」を励ます社会教育の創造を北の大地から」でした。グローバル経済と新自由主義的市場的競争原理は、地域破壊と人々のネットワークを分断しています。それに対して、今集会は、「つながること」、「ひろげる」ことに力点をおきました。この特色は、はっきり出ていたでしょうか? やわらかくあたたかい感触のポスター及び報告集をはじめ、私たちの手作りの集会づくりイメージ「つながるっていいよね」の精神がはっきりしていたでしょうか?
第一全体会の北の大地の映像や、出演者たち(子どもたち、若者たち、高齢者、女性、アイヌの人たち)のうたや踊り、道内各地の実践紹介、舞台からのメッセージは届いていたでしょうか?
課題別集会(6つ)の特色づくりは明確だったでしょうか?(6つの課題別テーマはそれぞれに重要な項目を示していました。なお、「格差貧困問題と家族支援」には181名、39.2%の参加者があり、緊急事情で、当初の予定を変えての出演者の交代を余儀なくされた第4「地方分権・自治体再編と担い手づくり」には、70名:15.2%の参加がありました。この集会の背景にある人々の時代関心の核心が出ていたように思います。)
全体交流会は満足できるものだったでしょうか? 実行委員会スタッフも含め、433名の参加者がありました。やや狭い会場ではありましたが、参加者があふれかえり、北海道の大地の味覚満載の皿が次々と出され、各地グループの紹介や出し物があり、胃袋も心もあたたかくなるお互いの交流であったのではないでしょうか。
分科会(全部で、24の分科会を設けました。初めての分科会には、15分科会:子どもの権利条例とまちづくり,16分科会:大地に根ざす産業ネットワークと地域作り、ほぼ初めてには24分科会:大学と地域連携)では十分な討議ができたでしょうか?
北海道からの発信メッセージは参加者の方々に届いたでしょうか?レポート数は道内から71本(87%)、道外11本(13%)でした。(たとえば、10分科会「聞こえませんか?北の山・川・海・大地の嘆き」のフィールドワーク、第2分科会「つながること・育ち合うこと」、13分科会「地域文化の創造とアートのまちづくり」、第1分科会「家族支援の時代の子育ち支援」118名などには。そのイメージが出ていましたでしょうか。)
この指とまれ集会には、15の企画が寄せられ、速報にも一部出ていますが、大変充実したものだったと伝えられています。内容はこれから集約しますが、それぞれに盛況でした。例えば、「韓国の平生教育を語るつどい」では、韓国からの参加者の二本のすばらしい報告があり、懇親会では入りきれないほどであったこと、社会教育を学ぶ学生・若者のつどいには60名以上の参加者で熱気があふれかえっていたことなど、この集会の特徴がでていました。
第二全体会に今の時代の声が聞こえ、展望が見えてきたでしょうか?訓子府町の菊池一春町長、阿智村の岡庭一雄村長の率直で深く大胆な問題提起から引き出された人生を生きる質の問い返し、地域に人間らしくいきていくための智恵や工夫や気概というものが伝わったでしょうか?恐らくは、答えは、YESでしょう。
全体を通じて、今回集会の分科会では、いくつかの工夫やアイデアが盛り込まれました。外分科会(4会場+1のフールドワーク)の設定、ジョイント分科会(図書館19と働く場12、博物館20と多文化共生5)などの旧来の枠を外した分科会設定などの分科会の持ち方、報告や討議においても、現場に則した学び、ワークショップ型の討議、当事者の語りと報告による共感や連帯の広がりがありました。韓国からの参加者からは、従来のお客様の枠を超えてのつっこんだ対等の意見交換と討議などがありました。また、いくつもの分科会において、総合的横断的な問題設定の必要、人間らしく生きていけるための地域と学びをつくりだす職員と住民と研究者の連携のありかたにふさわしい新しい分科会模索とそのための討議の質の高まりがあったことも特徴でした。
3 今集会は、本集会の前に計8つのプレ集会((札幌、道南の森町、オホーツクの網走、道北の士別、石狩圏の恵庭+3つの(図書館、障害者、子育ち)分科会、総計200数十名の参加)を持ちました。これまでの全国集会としては、最大のプレ集会数かと思います。報告の多さと内容の豊かさも特徴でした。これらは、北海道の各地の地元の運動やネットワークづくりへの波及効果をもたらしました。道南の報告集『イキイキ道南』などはその一つの成果でした。これらの北海道各地からの今集会に寄せる熱意と期待が、全国各地の多様な、文化、学習運動への寄与になればと念じます。道内、道外を問わず、すべての参加者が、全国各地の運動から、相互に学びあうことも重要な全国集会効果です。集会の種子が各地で芽吹いて花になって開花することを期待したいと思います。
4 今集会では、新たな参加者の方々が多く見られました。どのようなご意見をもたれたのでしょうか?社会教育分野での仕事をめざす若者や学生への励ましと意欲向上になったでしょうか?住民・市民や、職員に勇気や、やる気を起こさせたでしょうか?恐らくは、これも+効果大だったと思います。是非とも、そういう声を生かしたいと思います。
5 国際的な連帯や運動的な視野の拡大はどうだったでしょうか?今回も韓国から27名の参加者があり、通訳の声を受信するレシーバーの進歩などもあり、相互理解のより進んだ討議がいくつもの分科会で見られました。留学生の方々の参加(中国、韓国、その他)も目立ち、これらが教えることは、日本の社会教育実践を、国際的な視点でとらえかえすことがますます大事になってきていることを示していると思われます。次年度の生涯学習に関するユネスコ討議(ブラジル)などにもこうした視点を生かす工夫が求められています。
6 この集会に対する、自治体やメデイア(5紙取材)、各種の団体、事業組織、などの後援、協賛など支援と援助の輪が大きく広がりました。道教委からの30万円の後援や札幌市の後援、札幌コープからの食材支援、北海学園大学の会場提供のあたたかい配慮をはじめ、そのほか多くの団体、組織から協賛、支援、後援をいただきました。また、それら多様な諸組織への働きかけによって、社会教育への支援、認知の広がりが見られことを、喜びをもって確認したいと思います。
7 この集会の実施の上で、実行委員会、事務局、学生ボランテイアなどささえる広がりがみられたことも喜びたいと思います。1年半かけての集会準備プロセスの中での、多様な実行委員会(130名+40人協力者=170名)の輪の広がり、そしてその中核たる事務局をになうメンバー各自の力量や意欲の拡大がみられました。また札幌圏だけではなく、道内の色々な地域からの支援(道南、オホーツクをはじめ)をいただきました。事務局は、市民活動の担い手の方々、大学教員、院生(社会人)、が中心でした。不慣れな実務についてのゼロからの学習でした。多様な分野のチャレンジ(プレ集会企画、HP作成、会計、弁当、全体交流会、広告、ポスター、報告集づくり、学生ボランテイアの組織化、等々)がありました。集会の実務については、社全協本部(集会交流部)からの支援をはじめ、90年の知床集会の経験、昨年の阪奈和集会の経験からも多くを学びました。しかし、大半は新しい挑戦でした。至らないことが多くあったかと思いますが、ご寛容をお願いしたいと思います。
8 最後に、参加いただいたすべての皆様に感謝を申し上げます。
この集会の成果を生かした今後の集会の発展方向への示唆をきちんと総括し、次年度、阿智村岡庭村長が会場をお引き受けいただいた信州昼神温泉での「飯田下伊那集会」(仮称)に託したいと思います。
僕が世話人をした分科会風景
p.s.
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