週明けの日々、11月のリーズの天候は英国的というか、曇天、小雨交じりの毎日。夕刻の暮れる速度は、いや増してくる。札幌も似たようなところがあるが、雪がそれに加わることになる。
こちらの11月5日の朝のテレビや新聞の記事は、米国大統領選挙結果にかなりなスペースを割いている。史上初の黒人大統領。ブッシュ共和党政権時代とどう違う政策になるのか、あるいは同じなのか。クリントン時代と似たようなことになるのか。最悪の金融経済危機は、いかなる推移を示すのか。イラク、アフガン戦争はどうなるのか。など等。話題は多い。
バラク・オバマ(47歳)大統領(09年1月20日正式就任予定)は、ケニア人の父と米国人の母を持ち、選挙期間中、”Change”をとなえた、その”Change”のスタンスが今後どうなるかは分からない。
英米関係は、日米関係と似ているようで、そうでないところもある。メデイアの視線、視角もそのあたりは面白いところだろう。日本は、自公の与党は無論、民主党もそうだが、それらに属する政治家も米国ベッタリであり、メデイアの報道スタンスも、ワシントンの視線と声をそのままコピーしたようなものが多い。その意味では、米国からは、日本はもはや人畜無害であり、人格的に相手にされていない。インド洋の無料給油艦だの、沖縄、本土、グアム・サイパン?の米軍基地のいたれりつくせりのサービスだの、アメリカの赤字補填の供給国だの、要するに米国の忠実な家来・下僕としての役割を期待されるが、政策の的確あるいは批判的な判断を求められることはない。そのあたりは、英国も大同小異ではあるが、多少のにらみはあるようだ。
現実への批判的視点(限界があるのは当然だが)をもつ新聞のひとつであるガーデイアンも、5日の記事は、オバマ大統領誕生記事(上記写真)が多い。しかし、その一方では、昨年の英国軍兵士(海兵隊、海軍、空軍、陸軍、など男女4000人調査)の中で、イラク・アフガン戦争従事兵の中に、精神的病やPTSD(Post traumatic stress disorder、心的外傷後ストレス障害)発症率が高くなっている記事を、同日の紙面に載せている。記事では、女性兵士は1000人中8.2人と男性兵士4.0の二倍、事務官の1.8にたいし兵士が4.9であるとか、アフガン従事兵は3.8、イラク従事兵は4.7とか、これらの記事は地味だが、タイミングといい、ある種の時代批判性であろう。、日本では、「インド洋給油 調達先 伊藤忠など2社 225億円、随意契約で独占」(しんぶん赤旗、12月25日付)などの記事は、政党紙には報道されても一般紙には報道されないのはなぜだろう。
なお、オバマ当選に対してのアラブメデイアの反応は、まちまちであるようだ。カラダウイ師は、「私個人は、共和党候補マケイン上院議員の選出を望む。友人の仮面をつけた者よりも、敵意を隠す偽善者として振舞わぬ、あからさまな敵のほうがよいからだ」「民主党は気付かれぬようにじわじわと君たちを殺す。そこが危ないのだ。連中は蛇と同じである」。イラン日刊紙は「あの黒人がホワイトハウスでできることは、せいぜいスタッフを何人か入れ替え、行事のやり方を少し変えるぐらいのものである。アメリカの支配体制は、資本家、シオニスト、人種主義者によって確立されており、この男がこれを変えることは絶対できない」(Jomhouri-ye- Eslami)など手厳しいものが多い。他方、シリア紙は「オバマ大統領の登場を歓迎する」(Al-Watan)、サウジの日刊紙(Al-Hyat)は、「アメリカの選挙は、アラブの民主主義では起きない変革をもたらすことができる」など別の視点もある。アラブも一枚岩ではない。(以上、中東報道機関、MEMRI、Nov/5/2008から引用)
英国では、金融危機の中での、中堅総合スーパーのマークス&スペンサーが今年急激な減益を示している(高級衣料や、食品の売れ行き激減)記事があった。不景気が庶民の懐を直撃し始めている。しかし、過去10年間比較的経済が順調、ややバブリーではあったので、失業率も低く、労働運動や組合の力が弱体化してきた。これらが、この先どう展開するか。このあたりの感覚を、研究者に尋ね、その上で文献やインタビューに臨むことは必要な手続きだ。
来週はNick Ellison教授、さ来週は、グラスゴー大学のAndy Furlong教授の所にサバテイカルで滞在しているIA氏、現在コーク(アイルランド)にいるHMさん、ハダスフィールドに滞在しているMU夫妻と、リーズで「日本人会」?を開き、会って話すことになる。その翌週は、ジーン・ガーデイナー氏を介してコンタクトをとった雇用政策の若手専門家のIan Greer氏に会う予定だ。また、ケンブリッジ大のデイックから、本の執筆受諾の返信を昨日受け、2月の来日要請も行った。果たしてどうなるか。調査地の予備訪問は、来週行おう。
今夕は、キースとコリンとで、パブで飲みながら、いくつかのことを話すことになっている。
相変わらず、日本からのメールは絶えないが、ネットでの情報入手とともに、日本事情について共時的であることは、それはそれでよい事だ。
少しずつ僕も、日本のかたづけるべき仕事をこなしながら、ここでの仕事も進めている。
研究室の窓から見える駐車場の木々も葉を落とし紅葉しながら冬にそなえている。やがて、クリスマス一色になる町。それが終われば早くも帰国だ。
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