今日は、週末前金曜日。会議その他で午後はつぶれる。明日は、僕の研究分野の「東北・北海道6月集会」がある。今回は、札幌での開催だ。これで3週連続の学会での週末だ。
夜、寝る前に、NHK芸術劇場の舞台中継録画「焼肉ドラゴン」を観る。
【作】鄭義信【演出】鄭義信,梁正雄【出演】申哲振,高秀喜,千葉哲也,粟田麗,占部房子,朱仁英,若松力,朴帥泳,金文植,笑福亭銀瓶,水野あや,朱源実,朴勝哲,山田貴之他。東京 新国立劇場・小劇場での録画である。
「焼肉ドラゴン」は、新国立劇場小劇場で昨年四月に公演され、韓国でも五月にソウル芸術の殿堂で公演されたようだ。在日朝鮮・韓国人、日本人、韓国人の役者が混然一体となって出演し、1969-70年前後の、大阪万博の華やかな流れの裏側にあった関西の小都市の在日一家を舞台にして、在日の人々の生き方とそこから浮かび上がってくる歴史を、笑いと涙と怒りと悲しみをもってダイナミックに描いた作品だ。詳しい筋や、内容は、下記を参照されたい。
http://www.nntt.jac.go.jp/release/updata/20000283.html
「焼肉ドラゴン」は、昨年の演劇関係の賞を総なめにしたと聞く。朝日舞台芸術賞グランプリ、読売演劇大賞、紀伊国屋演劇賞個人賞などだ。鄭義信の演出は、関西弁とハングルが一緒になって醸し出す、空気が何ともいえず良い。ドタバタと笑いの後にしみじみとした哀感が心に残る。日本が犯した歴史的犯罪性や差別があぶり出されるとともに、在日の人々の暮らしが胸を打つ。芝居の最後の幕場で、国有地を追い出される家族の離散とつながりの希望の情景は余韻が残る。作品は、様々な事実を下敷きにしてのフィクションだが、それだけに、リアリテイもある。1970年前後から随分と時間が過ぎた。舞台のあの「家族」は、日本と、韓国と、「北」に別れて、その後の40年をどう生きたことになるのかという思いがしきりとした。
そういう点では、僕の中学時代の親しい友人の在日のO君の実家家族がまさしくそうだった。僕は幾度も彼のくず鉄回収業を生業としている実家でご飯を一緒にさせてもらう機会があった。大家族の和やかさがあった。また、在日の人々の8.15解放記念日の大運動会や演劇も一緒に連れて行ってもらった。彼のお姉さんの北への帰還、兄弟の生き方も聞いた。そして彼の結婚式にも出たし、その後の彼の人生もそばから眺めてきた。在日の人々は、日本の差別的な構造の中で、多くは韓国の地域を実際の故郷としながら、当時の北への帰還運動などもあって、姉妹兄弟・親族が「二つの母国」に引き裂かれ別れて住み、それぞれの政治に、そして日本社会や日本の政治に振り回されながら、生きてきた歴史がある。
今は、O君とは、毎年年賀状のやりとりをしているだけで長らく会っていない。家人は、ちゃんと会って話してきたらと言う。その通りだなと思う。演劇を観ながらそういう思いが広がった。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。