8月10日(月)続き
地域子ども図書館訪問後、昼食を経て、今度は、教育文化連帯の事業の一つである「カメ(亀)学校」へ行く。そこでは、食虫植物の栽培、ビオトープの育成などの収益事業と、子どもたちのキャンプ、多文化家庭(国際結婚家庭)の子どもたちのハングル語や補習学校が行われている。その精神は、スローライフビレッジ(slow life village) づくりにある。自然体験型学習などを通じて生き方と教育の調和をはかり、教育文化農場生産共同体づくりだ。
あらためて、清原郡「教育文化連帯」の活動を眺めると、①地域児童センター、②文芸教育、③多文化家庭支援、④小さな図書館の活性化、⑤隔週の土曜学校などを通じての文化体験、自然体験の学習が組織されている。
元々は、この活動の背景には、1990年代前半の進歩的教育、社会教育運動があり、そうした活動を基盤に1998年に社会参加教育に転換する流れができ、2006年に「教育文化連帯」がつくられたという。
亀学校の立地するイウオンミョン地区は、面積129.6平方㎞、世帯数2500,人口6277人、学校は小学校1,中学校1,高校1で、世帯の17%が多文化世帯(ベトナム、中国、日本、モンゴルなどの国の人との結婚)であるという。周囲は緑が多く、自転車で走れる町、自然が生きている町、森の自転車文化体験ができる。亀学校は2001年に出発し。農業事業とナムル(山菜)栽培、食虫植物栽培なども行い、体験学習指導に4人、マウル(村)福祉館に4人、農場に15人が、ボランテイアと職員が重なり合うように活動している。都市と農村との交流事業には昨年490名が来学校した。生活の中で実現させる社会参加、汗をかいて働く人が主人公になる、討論を通じた民主主義、自然にやさしい教育を気負わずにやっている。今は、生産、教育、文化、福祉、を統合させた事業を行っている。中心的な年齢層は、かつての学生運動を経て30代後半から住民運動に飛び込んだ人々が50代後半になっていて、その人たちの中核部分23人が1億2000万ウオンの出資金を出していて、それらを基盤に新たなカメ学校を近くに建設中という。こうした事業の基礎には信頼関係があるからだという。また、現在、地域通貨(通称;きれいなマウル)を発行しており、教育通貨として1000人が利用している。今後の展望においては、医療協同組合、生活協同組合を設立したいと考えているという。
2009年の夏を楽しくすごそうとの横幕、壁にはなつかしい馬乗りの絵が掛かっている。建物は廃校になった小学校を利用している。
亀学校では、地域新聞を発行し、多様な活動を紹介し、地域では今、ゴルフ場建設反対の運動があり、鶴の居る村をアピールして生態系保全の運動を支援しているという。亀学校を離れるときに、キャンプから帰ってきた子どもたちがいた。
夕刻前に、次の訪問地へ向かう。この日の最後は、清州(チョンジュ)平生学習館(日本風にいえば、清州生涯学習センター)の訪問調査インタビューだ。
チョンジュ(清州)は、韓国金属活字本の最古の発行地であり、並木街路で有名。韓国人の住みたい都市で1位という。忠清北道の道都で、道人口の42%が集中し、面積は153.4平方㎞、2つの区、30の洞、949の邑、4717の面の行政区画に分かれる。2009年7月末段階で64万2375人の人口を数える。自治体としては、年間1兆573億ウオンの予算規模を有している。
チョンジュ平生学習館は、元々の建物は女性文化学習センターから出発し、2008年に統合して平生学習館になったという。館長以下14人の職員が勤務し、正規の平生学習士は2人いる。チョンジュ市は、平生学習都市を宣言しており、同学習館も「学び跳躍する平生学習都市」として、主要な活動目標として、人間を中心とした学び(humanity),調和のとれた地域づくり(community),共に成長する(growth)を掲げている。平生学習都市制定以前と以降では予算規模が10倍に増えたという。(1億9000万ウオンから21億ウオンに)市全体予算が1兆573億ウオンなので、それに対して0.02%という数字は高いのか低いのか、そのあたりは判断が難しい。2007年に平生学習法が改正され、平生学習館の予算は増えてはいるようだ。館としては、学習ネットワークのつながり、学習サークル振興支援、疎外階層への学習支援、多様な学習領域のプログラム開発を課題としているという。
訪問を終えて、公州大学校に戻った。
帰路のバス車窓からは、桃の即売店をたくさん見かけた。最盛期なのだろう。
夕食時には、公州大学校教育学部最長老のイ・ヨンジェ先生(教育心理学)が参加くださって挨拶をしていただいた。
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