年始明けの週は、通常講義、演習と会議などの他に、提出された卒論、修論、それに博論第一次草稿などの読みから始まってきた。
1月8日は、「子どもと教育文化・道民の会」の新春のつどいであった。
http://blog.goo.ne.jp/douminnokai/e/a1d4f0e9a1dd11b9c48bdaeec9cba4ea (道民の会 ブログ試運転中)
http://www.dokokyoso.jp/kodomo-kyoiku/annai.htm#02 (2002年発足時のHP)
http://www.dokokyoso.jp/kodomo-kyoiku/(2004年改訂後のHP)
今回のつどいの性格は、下記の会報と「ちらし」をご覧いただきたい。
IMG dominnokai news letter 2011をダウンロード
第一部は講演。第二部は意見交流と討議の場であった。僕は、司会とコーデイネーター役であった。
第一部の講演は、世取山洋介さんの講演:「国連子どもの権利委員会「第3回最終所見」をどう生かすか」であった。
内容の中心は4つ。①子どもの権利条約の日本における実施をめぐっての最大の課題はなんであったか②その問題にNGOはどう取り組み、どのような答えを出して、国際社会に訴えたのか?そして、国連はどう答えてきたのか?③第3回最終所見はどのように答えたのか?④第3回最終所見に示された懸念と勧告を私たちはどう生かすことができるのか?
報告の柱は下記であった。
*子どもの不登校、校内暴力、いじめ、自殺データの資料(この数年が過去30年間の最大最悪数字)
IMG data of japanese children をダウンロード
はじめに
1 権利条約の日本における実質四半世紀を振り返る
2 CRC(国連子どもの権利委員会)は子どもの権利という観点から日本をどう見たのか?
3 CRCは問題克服のために何を求めたのか?
4 どのようにしてこの勧告を生かすのか?
5 おわりに
世取山さんのお話しは、刺激的、論争的、問題提起的な報告であった。一つは、子どもの権利把握における子どもの固有性理解において、自己決定権といった大人の人権規定の子どものへの機械的適用拡大論の誤りと陥穽を突き、ある意味での大人への依存や相談支援を含んでのサポートの重要性を指摘し、この限りでの川崎市の子どもの権利条例の限界性と現実の施策の問題性に触れたことである。二つには、労働市場を含む産業構造の大幅な変容のなかで「めあてのない競争」を強いられている子ども・若者たちの閉塞状況は、学校だけでは解決できない問題としての視野の拡大を迫るが、同時に教育・文化による国家・経済・資本の規制(刺激的表現では、ハメゴロシ)をはからなければ何ともならない段階にきていること、三つには、CRCは、今回この点で、新自由主義的な日本社会のありかた、公教育システム全体の改変を迫っているという意味で画期的であるとした点である。
第二部では、最初に2つの報告をいただいた。
札幌市子どもの権利委員会委員の粟野正紀(大学教員)さんから「子どもの権利条例その後ー大切なのは参加と意見表明の保障」という報告をいただいた。同権利委員会の議論の状況が良く分かる内容であった。
次に松代峰明(高校教員)さんから、「服装問題に取り組む子どもたちと大人の関わり-自主自律の学校を目指して-」と題した報告をしていただいた。服装の乱れと生徒減への危機ということが保護者と教師の懸念となってきたこと、1997年に「服装着用自由化宣言」をした時の生徒たちの自主的・自律的精神をいかに再生するのかといったことが報告の背景にはあった。しかし、同時に、F高校の服装の自由と自律の問題の根っこには、服装の乱れと生徒減への危機と共に、子どもたちを覆っている不安やストレスの増大という問題があったのではないかという意見も出された。
全体討議では、世取山報告に対して、多くの質疑をいただいた。
①教員の運動として子どもの権利条約をどう受け止めるのか、②教師の内部的な努力や学校改革実践と学校外の巨大な労働市場の構造変容とをいかに緊張をもってリンクさせるのか、③社会にある支配的な伝統的子ども観・理解をいかに変えていくのか、④子どもたちの固有な権利と自己決定との相克において、誰が自己決定をサポートし、相談できるようにするのか、⑤大人や親への豊かな依存を保障して初めて自立や自己決定の契機が生まれることの理解をどう深めるか⑥民族的少数者や難民、移民労働者の子どもの問題をどう考えるのか、⑦教育・文化(第三回所見の内容)によって、経済成長至上主義の原理をいかに組み替えるのかという問題は、人類的課題でもあり、具体的なレベルでどう構想するのか、⑧キャリア教育といった政策にまどわされない職業教育をいかに再生させるのか⑨国連や、ユニセフ、ユネスコ、(OECDすら)の基準を日本についてあてはめると、まだまだ弱い面と日本の固有の積極的先進性もある、これを統一していかに考えるか、⑩第三回所見など、重要な勧告や提言を日本政府の政策是正にいかに活用しきるか、等々多くの議論がなされた。
この日は参加者も100人を超え、実りのある新春のつどいであった。夕刻には、世取山さんを囲んでの懇親会には、十勝や室蘭からの参加者も含めて10人ほどの参加があった。二軒動いたが、北海道の地元食と沖縄料理店であった。酒食を囲み、和やかでかつ論争的な場が再現された。
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