先週末からの日誌だ。ちょっとした騒動があった。
11月15日 土
バスタブで朝湯とシャワー。昨夜の残りのスープに麺を入れての軽い朝食。
S氏から携帯で国際電話。途中で切れてこちらからかけ直す。2月のシンポの件だった。用件を伝えて、終わる。キッチンの後かたづけをして、さて今日は何をしようか案じていると、けたたましい火災警報の音。
あわてて、自分の部屋ではないと確信するが、すべての電気周りをチェック。問題はない。何だろうと思うが、鍵をもって外に出てみると、意外に多くの10人以上の居住人が、それぞれのとりあえずの格好で皆、外に出ている。こちらの他大学から来ている女性が、大学の警務担当に電話して10分以内に来るという。誰かがキッチンの湯を沸かして忘れて湯気で警報がなったのだろうというのが大方の意見。聞いているとフランス、東欧、スペイン、ドイツなどから来ている人が多い。しかし、どの部屋の誰かが分からない。計器メータ盤のゾーン1の4が点滅している。トップフロアは共用キッチンなので2階か3階の誰かの部屋だという。こういう場合、それぞれに個性が出る。必ずそういう人がいるが、すでにネクタイで正装をして新聞を求め落ち着いている年配の研究者が、落ち着き払って、郵便配達が来ると、手紙を部屋番号毎に読んで配り始める。やや、僕はなんだかなという感じを覚える。まだベッドから起きがけのカップル、すでに出かける用意をしていて多分火事ではないからよろしくと出かけるカップル、知り合い同士で話している人、僕のように知り合いがいなくて待っている人、それぞれだ。かつて、こちらの大学成人教育講座のフランス美術館ツアーに申し込んで、フェリーでドーバー海峡を渡ることがあったが、そのときに、誰かが飛び込み自殺を試みたらしく、ヘリコプターが周回し、船もぐるぐる回って探していたときに、グループの点呼があり、そういうときは、英国人は、それまではばらばらだったのが、そのときだけは、さっと集まり、点呼が終わるとそれぞれにまた自由に行動していた姿を見て、日本では物見高く海面をのぞいたり、あらぬ噂をするだろうなと思いながら、彼我の文化の違いを感じたことがあった。それに似た行動だ。結局、10分以内に、大学の担当職員が来て、該当の部屋に行き、多分中国系と思われる女性がso sorryと謝って出てくる。やはり、ポットの湯のわかしすぎに気づいていなかったようだ。大事に至らず、ほっとしたが、緊急の時の対応が大事だ。
何だか意気込みを、そがれて、Saltaireの世界遺産に行くのはやめにして、たまっていた洗濯をした。午後は、町に出てみた。
街に出て、防寒の衣類を探してみる。山登り系の店は、日本とゴアテックスものなど商品筋は似ているが種類少なく、値段は同じくらい。その他の店では、クリスマスバーゲンでテイーンズの息子の買い物に母親が付いている例が多い。日本の歳末風景と似た光景だ。クリスマスバーゲンの革製衣類にお値打ちなものがあるが重いし袖丈が長く合わない。帰路、バスセンター近くの中国食材店に行く。かつてと同じ場所でつぶれずにやっている。通りをはさんで、もう少し大きな食材店もある。リーズの中心部の中華レストランは次々と消えたが、食材店は繁盛している。この日は、米と魚フライ、豆腐のみそ汁の夕食にした。ビールと昨日の残りのワイン。
その後、コーヒーを飲んでくつろいでいると再びけたたましい火災警報ベル。一日に二度だ。
外に出ると、10人くらいが皆またかとさすがにうんざりした表情。それぞれが、防寒着を着ているので、僕もコートを羽織ってまた出てきて待つ。今度は、若い研究者カップルの部屋でのジャガイモ料理でのアラーム。どうも過敏な反応をアラームが示すらしい。またもや10数分後に大学の担当者が来て、アラーム音を直す。大きなアラームは消えたが、小さなブート警報音は残るらしい。待っている間に、一人寡黙な東洋人とおぼしき男性に話す。中国か台湾の人かなと思っていたが、日本人だった。聞けば、N大農学部の助教の方だ。僕も同窓だというと、気さくな話になった。名を聞くのを忘れたが、しばらく話す。同胞人であることはこういうときは和む。
戻ってから、気力がうせて、テレビをつけてみた。
英国のテレビは、前よりも水準が落ちている気がする。日本の番組と同じようなバラエテイ趣向が多く、後はスポーツ(圧倒的にフットボール=サッカー、それにラグビー、クリケット、テニス、乗馬、ダーツなど)、料理、旅番組、そして現地ものもあるが、アメリカのTVプログラムや昔のハリウッド映画の安上がりな放映、等など。番組のステレオタイプ化は、これもグロバリゼーションの影響か。韓国でも、中国でもやや似たような番組構成が見られた。
それにだ。BBCは国家への批判性がうすれて、愛国心昂揚というか、この間戦争の犠牲者の回想やルポが多い。番組にも、大英帝国時代の郷愁か、アフリカやインド、チベットなど旧植民地やゆかりの地域のもの、かつての帆船での大航海時代を再現した世界一周のアドベンチャーものなどにお金をかけた作品が多い。地上波がややすたれてスカイテレビ(衛星テレビ)に重点が移っているのか。クリテイカルな質保障はどうなっているのだろう。CMは、やはり時節柄、クリスマス商戦にからんだものが多い。
11月16日 日
明け方目が覚めて、ニックエリソン教授の本の序章と終章を読む。昨日の火災警報騒ぎで、意気がそがれたのと天候が悪いので部屋の片付けを行う。水曜日に、次の借り手に見せるので部屋を見せるという宿舎事務コーデイネータのエドのメールがあったので、少しはタイデイにしなくてはと思うのだが・・・
午後、市の中心部に出る気もしなかったので、近くのOxfamでジャンパーを買う。古着を買うのは初めての体験。まあ、やや英国田舎風で暖かそうだったので、フットボール観戦のときの上着の下に着ればちょうど良い暖かさだろう。この日は、昨日市中心部の東洋食材店で求めた材料で昨日同様の簡単な和風夕食をつくった。米飯とチキン野菜カレー、フルーツデザート、白ワインの安直料理。この日は、焦げ付きを防ぐ小さな片手なべを求めて、米を炊く。われながら、なかなかの出来だった。
11月17日 月
午後、ニック・エリソン教授と2度目のヒアリング。カレンダーと拙著をプレゼントする。多くの示唆的な話を聞くことができたがここでは省略する。次年度完成予定の共同研究本の執筆と2月の来日を約束してもらえたのが嬉しい副産物だ。
明日は、にわかヨークシャー「日本人会」(前に書いたグラスゴーやコーク、ハダスフィールドからリーズに参集し、それに僕が加わっての5人で)の夕食交流。明後日は、LLIでの僕の歓迎会だ。それは次のときに書こう
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