3月10日(火)日中12度。暖かい。春の気分だ。時折、雨のぱらつく日だが気にならない。朝食後、約束の9時半に3人と、それに今回加わるPさんたちが来て、少ししてからタビストック・スクエア近くのウエバーンハウスにあるUUKに行く。事前の申し入れをしていたキャサリン・マーストンさんに会う。質問状に従って、約束の1時間のインタビューを終えて、近くのユーストン通りのコスタカフェで内容の確認。これは、ノートに書いたから良いだろう。キャサリンは、若い研究者だった。
宿に戻り、Hさんと近くのブルンズウイックセンター内のスーパーで買い物。サンドウイッチなどの軽食、部屋に戻って、南木圭士の芥川賞受賞作品の「ダイヤモンドダスト」などの作品の入った短編集を読んで過ごす。彼の作品には、僕の気分と通底する何か表現しがたいが、時代や社会や人生への一歩引きながらも人間的尊厳を崩さないスタンスがある。藤沢周平と近いような権力批判と自己抑制というのだろうか。夕刻前にウトウトしたら7時を過ぎて寝てしまい、ドアをノックするHさんに起こされる。同様に寝ていたらしいUさんに電話して、食事に行く。雨上がりの夜空に、満月がのぞいていた。久しぶりに夜空を仰いだような気がする。夕食は、かつて行ったことのある近くの中華料理店にした。部屋に戻って、しばらくしてから寝入るが、夜半に眼がさめてしまう。体がまだ、時間に合っていない。
3月11日(水)日中10度。天気は穏やかで、中庭には、桜に似たような白い花をつけた樹木があり、陽光に映えている。今日は、トッテナムロード近くの、高等教育財政カウンシル(HEFCE)への訪問。ユーストン駅から、ノーザンラインで出かける。一日乗車券を買い、早めに着く。Pさんたちが来て、近くのスタバカフェで打ち合わせ。時間が近づき、HEFCEのある、センターポイントという合同庁舎的な建物に入る。セキュリテイが厳重で、入庁カードを発行してもらい、エレベータ前の照合機にかざすと目的の場所にしか行かないようにリフトが動いていく。12階で、クリフ・ハンコックさんが待っていてくれる。HEFCEの本部は、ブリストルにあるが遠いのでロンドン事務所で会うことになったが、12階の場所は手狭ではある。ハンコック氏は、1時間半の大半を、用意した資料で説明してくれる。国際関係マネージャーというのは、こういう外国からの訪問客に対して説明する役割なのだろう。説明後、Pさんたち、それに僕が質問して終了。建物の外に出て、近くのカフェバーでスープとサンドウイッチの食事を取りながら内容の簡単な確認を行う。Pさんたちは、午後の用件があり、中座する。食事後、Uさん、Hさんと一緒に、明日の訪問先のラッセルグループの場所を確認しに、トラファルガースクエア近くの該当の建物を探しに行く。目的地は、結局チャリングクロス駅そばにあったのだが、住所表記を頼りに、うろうろと探し回った。戦勝記念塔近くの建物は、歴史的建造物が多く、各国大使館などが建ち並ぶ。目的場所を確認したあと、ミレニアム橋近くを散策し、テムズ川ほとりの船上バーで、ビールを飲んでゆっくり時間を過ごす。川面を流れる風が心地よい。向こう岸はモダンテート美術館やミレニアム観覧車だ。行き来するクルーズ船が多い。ひとしきり、たわいない話をした後で、ホテルに戻ることにした。エンバークメント駅から帰路についたが、Uさんは、乗換駅途中で、買い物に行くとかで別れる。彼は、明日、一足早く帰国することになるのだ。ホテルに戻ってくつろいでから、7時にHさんと夕食にでかける。Uさんは、何か買ってきたものがあるらしく、部屋で過ごすという。Hさんと、この日、出かけたのは、近くのイタリアレストランだ。パスタとワインで済ます。
3月12日(木)日中13度、穏やかな曇天
朝食は相変わらず毎日同じものだ。時間の打ち合わせをHさん、Uさんと行う。10時過ぎに出かける。Uさんは、今日帰国だ。目的地近くのチャリングクロス駅に、ノーザンラインで行く。ノーザンバランドアベニュー1番地にある建物に少し早めに着いて、Pさんたちを待つ。ラッセル・グループのリビー・アストンさん、アレックさんが対応してくれる。事務所が手狭と言うので、近くの会議用のカフェに行く。1時間15分ほどの時間を効率的に僕たちの質問に即して応答してくださる。リビーとアレックは、若いが俊英な女性たちだ。僕が主に聴き、Pさんが補足的に聴いてくれる。興味あるインタビューだった。詳しくはノートに記録した。終了後、近くのパブで昼食をとる。僕は、ビーフパイと英国のアボットエール。皆それぞれだ。Uさんが帰国するので着替えや荷物その他があり、Hさんの部屋を使ってそれらをして行くというので、ピカデリーサーカスで別れる。僕はリーゼントストリートをブラブラ歩き、ネクタイを2本求め、ホテルに戻る。着替えてからくつろいで、岩波新書の「子どもの貧困」を読む。所属する部局同僚が色々と出てくる。時間をみて、洗濯できそうな余裕を考えて、近くのコインランドリーにいく。洗濯と乾燥のマシーンにお金を入れて回し待つだけだ。香港出身という客の老人にやり方を教えてもらい、単純な洗濯過程につきあう。香港人の老人とはいくらか話をかわす。1960年代に来てからもう40年という。息子はこちらで働いているという。英語はあまり上達しなかったようだが、苦労してこちらになじみ暮らしてきたのであろう年輪と人生の陰影を感じた。コインランドリーの機械は新しくなっているようだ。乾燥機の熱で暖かいせいか、蚊が飛んでいて刺したようだ。足がかゆい。ホテルに戻り、リーズ行きの鉄道をチェックして、7時にHさんと待ち合わせて食事に行く。今晩は、インド料理店だ。3種類のカレーを味わう。赤ワインが飲み物。ホテルに戻って、「子どもの貧困」を読み進める。
ラッセルグループは、1994年設立だが、元々ラッセルスクエアにあるラッセルホテルで会合をもったことからその名が来ているようだ。現在のオフィイスは2年前にトラファルガー広場近くのビルの1フロアを借りて事業・事務をこなしている。
3月13日(金)
朝食後、Hさんと鉄道切符を買いにキングス・クロス駅に行く。14日のリーズ行きは、鉄道が工事中で乗り換えが多いとのことで、隣のサントパンクラス駅からシェフィールド経由での切符を勧められ、かつ帰りの切符も買った。セーバーチケットとそうでないものとの間には40ポンド以上の価格差がある。英国の鉄道料金は複雑で、英国人にも不評なようだ。この日は、ケンブリッジ大学のリチャードテイラー氏との日程が調整できず、自由日となった。Hさんと一緒に、ビクトリア&アルバート美術館に行く。アジア関係のコーナーを観た後で、土産を買い、帰りにソーホーの中華街に行き、ラーメンと麻婆茄子での食事、ビールはチンタオビール。ホテルに戻り、5時少し前に、Pさんたちを待つ。夕食は、彼らのおすすめのノーザンラインのチョークファーム駅近くのギリシア料理店。地下鉄で移動して、お目当ての店に行く。カムデン地区の中産層の住む地域だ。レストランに行く前に、近くの公園の丘に登りロンドン市街を眺望する。英国テレコムタワー、ミレニアム観覧車、セントパンクラス駅が見える。のどかな春の気分だ。ギリシャ料理店では、前菜にギリシャヨーグルトと野菜、メインデイッシュに鯛のグリル料理、副菜に野菜サラダ、ライス、最後はギリシャコーヒー、アルコールはキプロスワイン、というのが僕の注文。それぞれが、お好みの料理を注文する。色々な話が出て食事を楽しんだ。Pさんたちにとっても、今回の調査は有益で参考になったようだ。テープ起こしは、PHさんにお願いすることになった。昨日の昼は、Pさんが支払ったので、この日は僕たちが払うことにしてあった。暖かな日だが、街角には物乞いや野宿者がいる。経済不況は、この地も深刻だ。ホテルに戻って、すっかり疲れてベッドに横たわる。
チョークファーム近くの丘に登ると、ロンドン市内が一望できる。この近くのギリシャ料理店は、なかなかおいしいお店であった。
3月14日(土)
今日は移動日で、ロンドンを引き払う。昼には、ミリアムに会うことになっている。朝食後、荷物をパッケージして、チェックアウト手続きをして宿代を払う。荷物を預けて、時間を見計らって、Hさんと一緒に出る。時間がまだあったので、大英博物館に寄ってみやげを求めてから、約束のレストランに行く。トルコ料理の店だ。ミリアム・ズーカス教授と再会して、互いに喜ぶ。英国の大学政策に対して大学人からの感想や実態への批判的見解を、ランチを食べながら聞くことが目的であった。彼女から率直な多くの見解を聞けたことは収穫であった。料理の味は大いによろしいものであった。ミリアムは、2月の札幌でのお返しであろうが親切さに多謝だ。彼女のおみやげに、お茶をわたす。インタビューを終えてから、ホテルに荷物を取りに戻り、セントパンクラス駅に急ぐ。しばらく待ってから、4時55分発の列車に乗り込む。シェフィールド行きの特急だ。ラッゲージスペースが狭いので往生する。シェフィールドに7時7分に到着。7時18分のリーズ行きに乗り、8時20分に着く。夕食の時間には遅いので、駅で水とサンドウイッチを求め、タクシーで宿に行く。この日は移動やその他で疲れた。Hさんには宿の使用その他についてお話してそれぞれの部屋に行く。ロンドンよりは、2-3度低いような体感温度だ。
上記の写真は改装なったセントパンクラス駅だ。国内線だけでなく、国際線ユーロスターの出発駅にもなって、パリへの特急も出る。下は、その駅近くに、大英博物館から移動してきた大英図書館の入り口の標語だ。「知識には二種類のものがある。私たちは、対象そのものを知ることと、もう一つはそのことについて情報がどこにあるかを知ることである」
出発時間が近づき、ロンドンをいったん離れることになった。
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