9月18日(金)
日本社会教育学会参加で、東京へ出張。会場は、大東文化大学板橋校舎。
初日は、シンポジウム。社会教育職員研究の一つの方向性を示唆した内容だった。報告者は、政策研究大学院大学の今野雅裕氏、長野県阿智村村長の岡庭一雄氏、所沢市教育委員会の細山俊男氏で、コメンテータは菊池朋子氏(横浜市男女共同参画推進協会)であった。詳しくは書かないが、文科省の政策意図を含めて率直な現状認識を語った今野氏、現場からの視点をもって、学会の特別年報のとらえかたに批判的なメスを入れ、かつ重要な提起をされた、岡庭さん、細山さんの報告は、学ぶことが多かった。
この日は、早めにホテルに戻り、翌日午後の科研研究会の自分の担当報告の残りの作業を行った。
9月19日(土)
明け方起きて報告作業の続き。ホテルでは、学会参加の幾人かと朝食のときに一緒になる。北海道のHK大学のSさんと少し話す。今日は、午前の自由研究発表の司会がある。午後の研究会での自分の報告準備に手間取り、出立がギリギリになる。あわててホテルを出るが東武東上線-バス(もしくはタクシー)のルートだと時間的に危うい。池袋でタクシーを拾い、一路学会会場まで急ぐ。タクシー代は高くついたが、開始時間ギリギリで間に合った。しかし、無論、気が気ではなかった。自由研究発表部会の(原理論・歴史、第2室)司会では、このこともあって、最初、心の余裕なく、人の名前を間違えたりして(K先生、ご免なさい)しまった。徐々に落ち着き、意欲的な若手会員の報告をお聞きして、学ぶことも多かった。この日は、韓国、イギリス、デンマーク、米国の多様なテーマでの歴史・比較研究の報告であった。この内容の紹介は、「学会通信」に載せることになるので、ここでは書かないでおこう。
午前の自由研究発表部会の司会を終えると、すぐに移動する。タクシーを捕まえて、今度は三田線の西台駅へ。三田線を南下して、三田駅で下車。東工大イノーベーションセンター(JR田町・地下鉄三田両駅に近い)にあるN大学の東京サテライト施設での科研費共同研究の研究会への参加である。僕の用件は、この3月の英国高等教育調査に関しての報告である。報告後、他の数人の報告をお聞きして、事前におことわりしておいたが、時間を見て途中退出する。またもや、社会教育学会会場へ戻る。学会総会の終わり近くになっていた。理事会改選で、新たに、Sさんが会長、NさんとSさんが副会長。Aさんが事務局長となった。時代の潮目の変化が、学会にも及んでいるような選挙結果であった。
総会後、懇親会。会場校のOさんが周到に準備したもの。予定した参加者よりも多かったと見えて、テーブルの食材はすぐになくなった。しかし、用意された「信濃のかたりべ」の樽酒がおいしく、胃の腑にしみて良かった。食のことよりも、僕は、この日、多くの人と話ができて良かった。
退任する旧会長のSさん、旧副会長のYさん、Mさん、旧事務局長Oさんの皆さん。
この日は、終了後、学会会場近くで二次会。その後、池袋に出て、若い院生諸氏と、ショットバーにて、三次会。ホテルに戻るとさすがに、疲れた。
9月20日(日)
この日は、何とか朝は通常コースで学会会場に時間前に着く。出席したのは、僕も関わってきた2年間のプロジェクト研究「教育法体系の改編と社会教育・生涯学習」の最終シンポである。「社会教育・生涯学習の理念と教育法体系改編の課題」が今年のタイトル。報告者は、南里悦史氏(東京農工大)、李正連氏(名大)、上原直人氏(名工大)であった。終了後は、この先、「年報」作成にとりかかっていくことになる。
昼食をはさんで午後は、このプロジェクトメンバーでの出版企画検討を兼ねた会議を行った。企画内容の方向については、今後、理事会で審議決定されていくことになった。
その後、ラウンドテーブルと同時並行の時間帯で、「現代生涯学習研究セミナー」の運営委員会を行った。次回の内容を決めていく会議であった。阿智村での開催を決め、内容については、いくつかの候補案を決めた。
さらに、その後は、「大都市の社会教育の研究と交流のつどい」(略称:大都市研)に参加した。この日は、東北大のIさんが今年の学会年報「自治体改革と社会教育ガバナンス」のコメント紹介を行い、大都市の教委事務局支部の皆さん、学会メンバーで自由に討議した。僕も論点を提示し議論に加わった。
終了後、移動して東武練馬駅近くで懇親会を行う。懇親会のお店「美松」は、学会会場校の0さんの紹介と配慮によるもので、休日に関わらず開けて頂いた。多謝である。Oさんも途中参加頂いた。
この日、参加された今年の参加者の面々。懇親会終了後、池袋に移動。偶然一緒になった、日体大のUさん、日大のAさんたちと一緒に、大都市研参加の幾人かと二次会を行う。体に悪いが、さらに、その後三次会にもつきあって、ようやくホテルにたどり着いたのはかなり遅かった。
9月21日(月、祝日)
9時半から、大東文化会館で、各都市(10都市、仙台、さいたま、川崎、横浜、名古屋、大阪、堺、神戸、岡山、福岡)の社会教育の現況分析と意見交換を行う。昼食をはさんで、午後もこの検討を行い、飛行機の関係で僕は途中で退出する。そのときには、僕なりの感想と意見を述べもした。
内容は、以下のファイルを参照されたい。
国レベルの政権の歴史的転換期に、自治体の施策や方向性にも潮目の変化をかたちづくる必要がある。新自由主義の終焉を多様な力を結集してかたちにしていく必要がありそうだ。
この日、列車や飛行機を乗り継いで、札幌の自宅に戻ったのはやはり相当に遅い時間となった。身体的、精神的な疲労がどっと襲ってきたのは言うまでもない。情けなくも風呂の中で寝てしまった。(トホホ!?)
2009大都市研 9月20-21日
大東文化大学&大学会館
姉崎記録メモ
9月20日
:学会年報「自治体改革と社会教育ガバナンス」の紹介
質疑:主要論文の検討。文脈、用語、内容について、疑問点を含め討議。
懇親会
東武練馬駅近くの「美松」にて。18人参加。
9月21日 第二日
9時半開始
各都市報告(10-15分ずつ)
1 仙台
① 市長選挙 前梅原市長は、経産省出身のキャリア官僚だった。市民センター講座費全額削減など提案し、教育費大幅カットで辣腕をふるった。これは、教育長(現市長)の抵抗などあり、半減に止まった。タクシー券問題などで出馬せず。奥山恵美子(前教育長)が新市長になった。 社民、民主、他40議員ほどの支持。違う流れができる可能性、市職労も支持。
② 広瀬図書館 指定管理者導入、天文台 PFI方式、行政サービスセンター縮小して証明
書発行センターにする、市民センター ひとまち交流財団に委託など合理化は止まっていない。
③ ただし、市民センターの区移管を08.11に公運審、社教委員会議に非公式に打診したが、
首長交代(09.7)で、新市長は、保留して、期限のない延長になった。(09.9)
2 さいたま 「公民館今後のあり方」を報告。
① 09.5月市長選挙 自民党籍の県会議員が民主党推薦で当選。市の職員と接点ない、総
務省からの派遣審議官が、片腕となって指揮している。副市長、教育長などはまだ人選されていない。
② 組合との団交 夏休み休暇7日から6日へ縮小、反発くいながら強行。
③ 公民館58館、58番目が鈴谷公民館、59番目に谷田公民館建設中
(大宮)西区に次の公民館、数年前から指定管理者の話、政策づくりが必要。
図書館などは、カウンターだけならば受け入れる。指定管理にはさせない。
2009年1月に コミュニテイ関連施設の今後のありかた(報告書)、平成22年度から見直し
出納室に予算配分を集中、職員の削減(コミュニテイ課、2人)、生涯学習センター 機能が落ちて、公民館を統制できていない。一つの施設になっていく方向。コミセンは19,全部指定管理、浦和パーキング、社協も・・・指定管理。
④ 前市長時代「さいたま市教育総合ビジョン2008」作成。学校教育に重点、家庭教育、
社会教育は薄い。
⑤ この間合理化を言ってきたのに、この3年公民館は新設してきた。住民要求が強いと、
施策に、矛盾が出ざるを得ない。それがどのように管理されるか分からない。混沌とした状況。公民館の市長部局移管は、市民と職員の力で阻止してきた。しかし、「コミュニテイ関連施設検討会議」が組織され、検討が続いている。検討会議は不気味。
3 川崎
① 09,10月に市長選挙が行われる。阿部氏を推薦予定(市職労)、対立候補は共産党
8月の総選挙で民主党圧勝、9月10日 民主党福田氏を推薦、自民は独自候補
安倍氏は民主党推薦をねらったがダメ、孤立。組合内部では、自治官僚だった安倍氏は推薦にあたらないという意見もあり、複雑な雰囲気。
② 市職労 「財政白書09」作成。
市民館の区役所移管問題が大きな争点。指定管理者の阻止はおこなってきた。
ただし、教文・市民館・→←←指定管理者に(図書館の一部もそうである)
③ 行財政室の企画、立案が出ている。
④ 市民館の区役所移管問題では、25日大集会?を行う。
仙台は、諮問理由は出していない(移管ではなく、融合をつかった。説明を役人ができない。検討に耐えられない。)川崎はどうするか。
4 横浜
① 中田市長 任期途中で、7月辞任公表。中田市長は、外部への評価はともかく、内部に
は不評。最初に行革ありきの姿勢で、例えば、毎年1割マイナスシーリングで、図書館資料購入費6年で半減した。市民運動、組合は、新たな市長を求めるが決まらず、ダイエー出身の新市長が出る。一応対話重視は言っている。
② 横浜市立図書館指定管理者、一部は実行されてしまった。しかし、全体としては、2万
人の署名、市民運動が起きて2008.12市議会で継続審議になる。中間総括では、「あり方懇談会」は(結論先にありき)<アイリバイ懇談会>だった。附帯決議5項目、ただし、今後の組合の力量の不安はある。
③ 図書館の選本では、業者選定委員会が、有隣堂(地元)に決定。2位はTRC
④ 滞在型、課題解決型図書館にむけて、司書職員190人のインセンテイブを高めたい。
5 名古屋 ( 木村;瑞穂図書館 )
① 市長選挙 4月 河村たかしが圧勝。松原市長退任後、民主党からゴタゴタしたが推薦
をうける。対立候補は、松原市政継承派の細川、共産党候補の太田であった。名古屋弁を多用し、地元受けしているが、政治理念が、分からない。グラムシ政治研究者の後房雄がブレーンで、市の経営アドバイザーを引き受けたが、間もなく辞任。地域委員会は後のアイデア。自治労名古屋は、自主投票であった。自治労連の市職労は、どうしたのか?
② 河村市政は何をしようとしているのか?名古屋城本丸御殿の築営、市民税1割削減をう
たう。財源不足になる 500億円不足→人件費1割カット、事業削減、廃止必至→教育委員会に37億円の削減命令→
③ 生涯学習センター(区移管)→地域委員会にまかせる?地域委員会は、小学校区または
学校区に設置し、予算の使い方を決め、市が執行する。従来の学区連絡協議会は猛反発している。生涯学習センターは、指定管理の動きになるか?あるいは、生涯学習センターの廃止か?博物館;管理部門の指定管理か?
図書館;1館にカウンターへの指定管理の導入(業務委託)6月市会:自民党議員質問、「カウンター業務委託の拡大」(教育長)、市長;「図書館は、民間委託で良い」と答弁(思いつきで言う)市当局の市長と教育長の答弁に矛盾がある。自動車図書館:廃止の方針(代替で文庫でよい)
④ 都市内分権、地域委員会 住民自治をどう考えるか。
6 大阪
① 大阪市、戦後長く助役出身が市長のルートへの批判の世論高まり、2007年12月平
松市長(民間テレビ出身)誕生。市職労は支持。現状;少数与党でうまく議会運営できない。大阪府 橋下府知事のパフォーマンスといつも比較される。国政転換で風向き変わる?
② 「今後10年の中期財政見通し」7/16公表、累積赤字の膨大化の見通し;2600億円
生活保護費の歳出増など避けられず、事務事業の総点検 ゼロベース予算編成。
③ 大阪市 社会教育 専門職採用 8年ストップ。指定管理者、首長部局への移管進展で
教委所管が減少。社教については、図書館、音楽団 が主なものとなった。同和対策の一環で、青少年会館廃止。会館の社会教育主事を引き上げ、2年半前から24区役所に3人ずつ配置。仕事として例えば、小学校区レベルのコミュニテイづくりを1人が担当。区役所ではまだ、社会教育主事の認知が低く、中には戸籍担当もさせられている。専門職性が、崩されてきている。
④ 指定管理者;総合生涯学習センター、4市民学習センターの指定管理者の再選定;5施
設一体の募集とした。部分的改善か?
⑤ 専門職の市職教委支部の中での比率減少、学校といかにつながるかが課題となってきた。
支部自治研集会を子ども対象で行う。学校、区役所の両面での関係性;主事会としての結集が個人に依存するかたちとなって弱まっている。学校も、区役所も、これまでの社教の
「作法」とは違うので、それに対してどう対応するか;溝を先に決めるのではなく、水を流して流れかたを見てから、それをたしかめてみたい。
7 堺市
① 9月27日 市長選挙、4人の候補者、オール与党の現職木原、橋下知事、首長連合の
支持を受けた竹山、共産推薦の小林。「堺市の図書館を考える会」市長候補に公開質問。(*竹山氏の当選となった。)
② 2008年 生涯学習、青少年、博物館を市長部局に移管(市民人権局、子ども青少年
局、市長公室)→ダイレクトに市長の意向が出る、政令市化して、局が違うと分からなくなり、連携がとれない。
③ 政令市になって4年目;教職員独自採用となった。市は、教委を学校に特化したい意向。社教については、所管権限を教委に残しながら、区に補助執行させ、人を動かす方策をとってきている。法根拠;地方自治法180条の7,補助執行、条例を変えないので、教育長の専決事項になってしまっている。
図書館は教委に残ったが、学芸員は市長部局へ。社会教育施設は、管理部門が中心となり、現場では、社会教育主事は専門職ではないので、区役所に編入。司書、学芸員以外の専門職がなかったので、教委支部活動が困難になっている。
府立図書館の市場化テスト、業務範囲を決める レファレンスの一部。これらの改革は、
少数のメンバーで進めていく形。密室政治となっている。
8 神戸市
① 市長選挙10月、 現職はオール与党。対抗馬は、共産独自候補と新たにリクルート
出身40才の樫野氏出馬。元東京和田中校長も推す、橋下大阪府知事推薦。波乱含み。
② 市予算縮小し;1兆800億円 教育費710億(4年前950億円)、
3000人の職員削減完了、今年は200名弱、100数十名採用。
③ 指定管理者導入された施設の評価;形式的評価、指定をつづけるための評価?となって
いる。丸投げした施設は評価がされていない。
教委;博物館、美術館、公民館は直営、同和対策上、指定管理になじまないとされている。区民センターは指定管理、その他の社会教育施設は、指定管理。市内184施設に指定管理者導入。図書館は、6図書館に加え、2010.4から新たに2図書館で指定管理導入予定。残るは中央図書館のみとなりそう。中央館のこすための戦術?
④指定管理職員は、時給870円のパート職種が多い。館長など、管理職は20-25万円クラスで劣悪、ワーキングプアの温床。指定管理が続かない場合失職する。神戸の職種は、定着率は7-8割で高い、しかし、研修機会なくスキルアップができない。こどもサービス委員会は、指定管理職員と直営館職員が一緒に行っているが、協力と反目の複雑な状態。
9 岡山
① 市長選挙;5人の候補、前副市長の天野かつあきさん(市職労支持)破れる。高谷現市
長;行革ありき、市場化、再選されたが有効投票数の37%をとったに過ぎない。
② 人口70万人 政令市09.4-から出発。4区で出発。455人職員削減、しかし職場を
増やし、県の仕事が回ってくる。過労で病休者が増える。2007年 NHKスペシャルで、「夕張の次は岡山」の報道。
③ 公民館;地区公民館 2005 31館に1名ずつ正規職員、合併地区4地区公民館は、
嘱託職員であったが、1館は、正規職・社会教育主事1,嘱託1,嘱託館長1で出発。残り3館はこれから調整する。「公民館白書 part2」を刊行した。
④ 図書館;包括外部監査結果報告書(2007)が出され、合理化方針が出てくる。
「政令市岡山の図書館を考える会」が批判的活動、要望を出してきた。
⑤ 「私たちのまち・岡山を考える市民のつどい」開催。自治体のありかた、市長部局と教
育委員会のありかた、公民館のありかた、地域の課題にどう向き合うか、安全安心ネットワーク(小学校区)に公民館がどう関われるかが焦点となってきている。
⑥ 公民館の市長部局移管阻止の歯止めは何であったか;内田さんの記憶では(生涯学習課
への回答)いくつか原則的理由や、合理性のなさも伝えたが、婦人会組織 連合町内会会長 社会教育関係団体の意向は、社会教育である、市長部局に行きたくないことを伝えた。それが大きかったか?
10 福岡
用意した資料(33頁)の説明
・市民センターおよび公民館支援の今後のあり方について、
・住民主体のコミュニテイづくり、・
・コミュニテイに関する今後の取り組み、
・福岡社会教育研究会
区に区役所区政推進部地域支援課がつくられ、そこに社会教育主事1人を配置するようになった。2001年に、7市民センターが区に移管された。2004年に公民館が区に移管された。
職員は孤立し、展望をもちにくい状況に置かれた。それを打破するために、組合活動と職場活動を福岡社会教育研究会が支える三者連関の活動が進められてきた。市民センターの指定管理者提案が出されたが、教育委員会も7区長も反対した。背景には、それまで長年にわたって培ってきた住民と職員協働の社会教育の活動がある。
要点:合理化、危機の進行する福岡の中で最大限できることを追求する。住民の目線で職員の仕事を行う、大学・社会教育研究会との連携が重要。
以上10都市の状況に対して、僕の感想は以下である。(当日時間がなかったが、言わんとしたことは以下のことである)
1)自治体合理化の中で踏みとどまる、踏みとどまっているのは、専門職あるいは、
共同の職員集団が生きて働いているところ。
図書館、公民館、博物館については、司書(多くの自治体)、社会教育主事(大阪、岡山など)学芸員(仙台、大阪その他)の実態的力量と法的根拠が歯止め。他方、専門職は孤立した孤独なものではなく、その蓄積した力には市民からの信頼が横たわっている。(信頼、社会資本、つながり)この点では、仙台、岡山やさいたまの事例には、運動的力量の蓄積と市民の支えが鍵であることを示している。また、公民館や社会教育施設では、どこでもがんばれるためにはその力量を属人的にしないための知恵が必要である。(長野県の飯田・下伊那地域や松本市の公民館主事会が示唆的)また、福岡のYさんの運動の経験が教えることも多い。公民館(職場)- 地域組織・学び(社教研)- 組合の3者連関(トリアーデ)が重要である。
2)自治体改革の現段階の特徴
①総合行政の進展、子ども行政、高齢者行政など、タテワリの弊害の打破を含む改革面があるが、他方では、市長部局の政治的思惑の中でそれへの批判ができにくい空気が醸成される。また、教委(とくに社会教育行政分野)が、それらの行政に包摂されていく側面がある。逆に、学校教育は、教委の中で聖域化して、外からの批判や改革の意図が通りにくい面が出る。
②自治法、地教行法の解釈で、社会教育行政がますます削り取られ、他方では違法すれずれの住民無視、無責任行政が行われている。地方自治法244条の2の改正が指定管理者制度の根拠であったが、地方自治法180条の7が,一般行政における教委の社会教育行政事務にかんする補助執行の根拠とされている。この結果、職員の社会教育の自由(住民の学習権保障のための)が無視され、事業の廃止や削減など合理化の道具として使われてきている。(横浜、名古屋、福岡など)また、地教行法改正で、文化・スポーツ分野の首長部局への移管、さらにはファージーな領域として社会教育行政がそのまま首長部局に業務委嘱されていく傾向が出てきている。
④ 改革手法の新しい方向が、小泉内閣時代以降強まった。それは、主として経済財政諮問
会議-内閣府-教育再生会議-首長部局という流れをつくり、<再組織型>ともいうべき方法で、従来の慣行や歴史を無視して専ら、財政効率とPDCAサイクルなどでの外部評価にもとづく予算配分原理をとった。これは、主人(P)-代理人(A)理論にもとづく。他方、<取り込み型>、<協働型>については、文科省-教委の流れであり、対抗的運動との妥協や抑圧による方式を採用し、住民サービスにおいては、従来の慣行や歴史を尊重するという制約を受けるものであった。前者の流れはまだしばらく続くが、住民からの批判や声に対して、説得的でないために、早晩瓦解するものといえる。
⑤ 指定管理者制度は、多領域の財政合理化を進める改革の切り札として多用されてきた。
社会教育では、文化、スポーツ、博物館で先行し、公民館にも及び、ついには、図書館にも及ぶようになってきたが、その一方で、当初の財政的節減の内容が、多くは派遣労働や指定管理者受託企業の雇用職員の非人間的低賃金と劣悪な処遇に依拠するものであることから、矛盾点が噴出してきた。非正規労働者自身の抗議や官製ワーキングプア批判の世論の前に、指定管理者企業に労働組合結成の動きや個々人の職員の要求の前に、待遇改善がされてきた例も出てきた。また、コスト的に見合わず撤退する企業も出てきた。自治体内部からも、このシステムに批判が続出するようになってきている。
第一段階は、導入阻止の戦いであった。今は、第二段階のたたかいで、導入後の改善改革の戦いである。やがて、第三段階として、この制度の非人間的な部分については、自然死させる方向を模索し、研究する必要がある。
⑥ 首長のありかたや政治手法問題が、この間注目されるようになってきた。とりわけ、「改
革派」首長の、マスメデイアを利用し、ポピュリズムに訴え「人気」を煽り、「改革」を断行する手法が流行し、かつそれらの首長が連合して陣地を増やす戦略をとっている。橋下大阪府知事、前横浜中田市長などが、その典型であり、河村たかし名古屋市長も個性は違うが、同様の手法をとっている。松下政経塾、特定のシンクタンク、コンサルタント・アドバイザーたちが介在していることも特徴的であり、文科省などの手法と異なるやりかた(新自由主義+新国家主義、及び教育における民意や組合軽視に共通点がある)でもあり、これらへの有効な対抗戦略をもつ必要がある。その意味で、各自治体首長の政治政策、改革手法、マニフェスト研究を行う必要がある。
⑦ 教育は、条件整備における国家的責任の確保と他方での教育内容や実際の進め方につい
ては、国から自治体へ解放されるべき性質を本来有している。この点で、近年、自治体改革において、「住民参加」をうたい「協働」をうたい、「熟慮民主主義」や「ガバナンス」理論が隆盛しているが、その落とし穴に注意する必要がある。「住民参加」行政には、多様な形態がその際見られるが、最終的に行政施策の円滑な達成と、政策決定のトップダウン(マネジメントにおけるリーダーシップ発揮)に利用されるだけのものであるとすれば、「参加」も「協働」も「熟慮」もまがいものである。「自治」の名を借りての、政策当事者の意図のカムフラージュに利用されるものであってはならない。その意味で、「自治への 多様な学びと交流」が不可欠である。社会教育は、住民サイドからの「自治」のありかたと評価の視点をかたちづくる重要な場を提供する役割をもつ。
⑧ 住民自治と教育自治の実践構造についての研究が必要である。
これまで、我が国では、<狭域自治>( 町会 コミュニテイレベル)の経験と教訓をたくさん、もっている。とりわけ、小学校区の公民館、字公民館、集落公民館の住民自治を育む内容を受け止める必要がある。次に、中学校区などの比較的<中間的な範域での自治>があり、地区公民館などはこの点の拠点である。他方、<広域(区レベル)自治>はどうであろうか。大都市の場合、古くからの自治体(東京、大阪、名古屋、京都、神戸)には、公民館がその拠点機能を果たす歴史的経験がなかった。札幌、横浜、川崎も同様な傾向にあった。ただし、図書館、博物館、大学については、その蓄積がある。福岡、北九州は、この点で公民館の果たした独自な歴史をもち、経験を有している。後発組については、仙台、さいたま、千葉、堺、岡山などは、何らかの合併前の市町村の公民館の歴史を持ち、その歴史的経験を生かす可能性を有している。大都市・政令市の公民館のない、社会教育の土壌のない中で、いかに住民自治を育んでいくのか、その点で、中小都市や農村社会教育の「自治の学び」の成果に学ぶことがあらためて求められている。
⑨ 社会教育実践、住民の暮らしや職員の生きがいを支える力の形成
ひとりひとりの意欲や活動を支えるには、ユニオンの再生の課題がある。ある意味で、今はユニオンがあらためて注目され、その力を発揮する時代に転換しつつある。ユニオンは組合員(メンバーシップ)の既得権利益を守るだけの組織であれば、このさき生き残ることは難しい。ユニオンの活動として、組合員の利益を守ることが、すべての住民の人々の権利と暮らしを擁護することになるような開かれたユニオンにする課題が突きつけられている。社会教育の発展にとって、ユニオンの果たす役割について、きちんと問題を洗い出し、改善する方向を明らかにする必要がある。
3) 今後の課題
自治体の組合と研究者が協力して、改革、改善の方向を研究し、多くの人々に支持されるような提言をしていくことが必要である。お互いの持ち場での努力を重ねよう。
残りの時間の討議については、Oさんからの送信による「しせつぶかい通信⑦」(09.9.21)(川崎市職労 教育支部 社会教育施設部会 「第32回大都市の社会教育 研究と交流のつどい」)を参照されたい。
川崎市
2009年9月21日(月)大都市研
第32回大都市の社会教育 研究と交流のつどい
日 時 2009年9月21日(月)午前9時30分~午後4時30分
会 場 大東文化大学大東文化会館 4階 K-0404会議室
参加者 18人(労組14:川崎から岡崎慎一、小田切督剛。研究者4:北海道大・姉崎、東北大・石井山、神戸大・末本、千葉大・長澤)
1 各都市報告
都市 |
委託導入、組織改編 |
首長選挙関連 |
仙台 (山田、今川、石井山) |
1.図書館1館に指定管理者。正規職員1名以外は非常勤職員。合理化は止まらないが、市長選挙により変化があるだろう。2.公民館施設が市民センターだが、開館日の異なる行政サービスセンターが敷地内に設置され問題が出始めている。3.市民センターの区移管が「融合」として出された。2008.4に社会教育委員会議に非公式に出され委員がだいぶつついた。「移管で現場がどう変わるのか」質問したが事務局は十分説明できず。2008.11に公運審でも非公式に出されたが、9月はじめの公運審で無期延期。 |
7/26市長選挙。経済産業省のキャリア官僚出身の前市長が市民センター講座費全額カットなど提起。当時カットに反対した教育長が今回市長に当選。独自色はまだ出ていない。 |
さいたま(江口、片野) |
1.図書館は5年前に館長と職員含めたプロジェクト設立。「カウンターまでは委託可能」と結論。2.コミュニティセンター19館はすべて市財団に指定管理。2010に見直しがあるが、民間企業への委託の見込みがあり対応を検討。3. 公民館58館に矢田公民館2010オープン予定。報償費予算を各区に再配当していたが出納部に一本化。4.公民館とコミュニティセンターの兼務を外して職員1名を削減。5.生涯学習総合センターの公民館とりまとめ機能が弱化。6.前市長の時に教育畑で「さいたま市教育総合ビジョン」策定。社会教育は数ページしかない。7.2003に公民館の市長部局移管提案があり、旧浦和の市民と職員の反対で止めた。しかし「コミュニティ関連施設検討会議」が新たに組織され、検討が続いている。毎年公民館を建設。 |
5に市長選挙。自民党籍の県会議員が民主党の推薦で当選。市職員との接点がない。教育長は新たに人選。 |
川崎 |
1.教育文化会館、市民館、図書館での一部業務委託、2.業務移管、併任 |
10/25市長選挙。 |
横浜(長谷川) |
1.図書館資料費が毎年1割シーリングにより6年で半減。2.山内図書館の指定管理者制度導入問題。市民とともに学習会などを多数開催。議員に働きかけて2008.12市会で継続審議に。2009.8に業者選定委員会が有隣堂に決定。2位はTRC。3.レファレンスに重きを置いた滞在型・課題解決型図書館に向かっているが、司書職員190人のモチベーションを上げたい。 |
8/30市長選挙。中田市長は内部の評判が悪かったが新市長は対話重視を掲げる。 |
名古屋(木村) |
公約に上げた減税や地域委員会創設が社会教育に大きな影響。1.地域委員会は、小学校区または中学校区に設置し、予算の使い道を議論し決定。市が執行。2.市民税1割減税により500億円財源不足。人件費1割カット。教育委員会に37億円カット指示。3.区に移管され社会教育主事も配置された社会教育施設である生涯学習センターを地域委員会などに指定管理検討。一部に廃止論。4.図書館は自動車図書館廃止。2008カウンター委託提案。反対したが2009.4から1館導入。2009.6市会でカウンター委託と指定管理導入が質問され、教育長はカウンター委託拡大答弁。市長は指定管理を進める答弁。 |
4月河村たかし市長当選。政治理念不明。グラムシ研究者の後房雄がブレーンだったが、市の経営アドバイザーを辞任。地域委員会も後房雄のアイデア。 |
大阪(宮崎、村上) |
1.累積赤字が増加。事業をゼロベースから見直すとして、社会教育主事の専門職採用が8年ほど止まっている。市長部局への移管が進み、また同和対策の一環で青少年会館が廃止され、社会教育主事を引き上げて2年半前から24区役所に3人ずつ配置。小学校区レベルのコミュニティづくりを1人担当。どう生かすかは区長の権限なので、区役所内でまだ認知されず地域にも入っていけず機能していない。戸籍を担当したりしている。区支部役員とも意見交換。2.教育委員会で社会教育領域が縮小。音楽団の音楽士なども移管され教育支部の中の専門職減少。教育委員会にある最後の意義として学校と連携した事業展開を目玉にせざるをえない。支部内の自治研集会も学社連携・融合の契機に。3. 図書館は指定管理ない。公民館にあたる総合生涯学習センターと4市民学習センターに既に指定管理導入。2010年からの募集は5館一体となり評価できる。行革担当の室長が教育支部の元支部長なので水面下で意見交換。 |
助役出身市長が戦後ずっと続いてきた。2007.12に初の民間首長の平松市長当選。少数与党でうまく進まず。大阪府の橋下知事の影響大きい。 |
堺(竹田) |
1.3つの市長部局(市民人権局、子ども青少年局、市長公室)に分けて移管。観光に力を入れているため博物館を市長公室に。補助執行は条例を変えないため、市議会にもかからず大きな問題。2.教育委員会を学校教育に特化したいとの意向。社会教育施設の現場を持たなくなり、管理部門しか残っていない。3.社会教育主事は専門職でなく、司書と学芸員のみ。現場の組合員で支部を再編することを検討。 |
9/27市長選挙。「堺市の図書館を考える会」が市長候補に公開質問。オール与党の現職・きはら、共産・小林、橋下が支持する竹山。 |
神戸(坂本) |
1.予算が縮小し1兆8百億円に。3,000人削減が終わり、2009.4に200人新規採用。2. 博物館や公民館は直営。同和対策の一環のため指定管理になじまないとされている。ただし各区の区民センターは指定管理。市内184施設に指定管理を導入。3.窓口委託の延長のように、図書館の中にわざわざ指定管理者を置くような場所を作って導入している感じ。6図書館に加え2010.4から新たに2図書館に導入。残るのは中央館のみ。指定管理はパートがすごく多い。責任者クラスでも月給が20~25万円。ワーキングプアの温床になっているのは間違いない。しかし市民からの苦情など仕事の強度が高い。定着率は7~8割でひじょうに良いが、スキルアップなども困難。子どもサービス委員会は直営館と指定管理の職員ができるだけ一緒に出かけていこうとしている。直営館と指定管理の職員の反目もないわけではないが、所管だよりを直営館と一緒に発行するなどやる気が感じられるので余計に申し訳ない。4.図書館協議会は2008にやっと設置。 |
10市長選挙。現職はオール与党。元リクルートの樫野氏が出馬。 |
岡山(田中、内田) |
1.人口70万で3区予定が4区に。3年間の新規採用凍結後であり職場は大変で病休者増。2007年にNHKが「夕張の次は岡山」と危機感。2.公民館充実運動。前市長の決断で2005から市内37公民館に正規職員1名ずつ社会教育主事として配置。『公民館白書Part2』を準備中。3.市長部局移管が2007に水面下で出たが、スポーツ振興のみが移管。4.8/9に皮肉を込めて「政令市岡山の図書館を考えるつどい」開催。5.市長部局移管の話もまた出てくるだろう。社会教育分野だけにとどまる運動では難しい。自治体発展、特に地域課題に切り込む社会教育の役割をもっと打ち出す必要がある。市長部局に移ると自治会との関係が出てくる。連合婦人会は社会教育関係団体というアイデンティティがあるため市長部局に行きたくないという姿勢。 |
9/13市長選挙。高谷(たかや)市長は行革最優先。図書館を争点化できないか公開質問状を出した。無回答の候補が当選。 |
福岡(横山) |
1.7区に区役所区政推進部地域支援課があり、社会教育主事1人配置。2001に7市民センターが区移管。2004に公民館が区移管。組合活動と職場活動を福岡・社会教育研究会が支えるという三位一体で進めている。2.市民センターの指定管理者が提案されたが、教育委員会も7区長も反対。一方で住民の自治を育てていくことは大切。 |
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2 意見交換(12:30~1:25休憩)
(1)住民自治
・ 社会教育政策とコミュニティ政策に積極的に結びつけ、自治につなげる必要がある。自治協議会やまちづくり協議会は民主的な運営が課題。翼賛的になるか民主的なものになるか。福岡は校区に1950年代から公民館があったということが重要だった。
・ 行政の下請け型になる可能性がある。NPOのようなミッションを持った市民が育っていくような制度にはなっていない印象。
・ 神戸は市職員生活協同組合が博物館の指定管理となっている。今後ワーカーズコレクティブ、高齢者協同組合などが指定管理を受けて、地域の社会教育の担い手になっていくことが増えていくのではないか。そこに自治体労働組合が出資することも考えられる。しかしワーカーズコレクティブは市民自治というより市民を「顧客」と見ている。
(2)社会教育主事
・ 大阪は社会教育主事が区役所に配置されているが、なかなか地域に入り込めていない。社会教育主事会では「最低限のことを保障する仕組みを作れないか」と議論になっている。社会教育主事講習などは教育委員会から区役所にお願いして受講してもらっている。発令も、教育委員会から市長部局にお願いして発令している。人事異動のルールを作りたくても「人事は労使交渉事項にならない」といわれてしまう。
・ 区役所の中に「公民館を理解する人」を増やしていくことが大切。記録を作ること、「地域支援担当職員研修」などで提言していくこと、大学と協力してインフォーマルな社会教育研究会を作るのも重要な方法。
・ 私たちは自治協議会に反対してきたが、地域支援課に配属された。区役所の中でどれだけ認知され、社会教育的な姿勢で力を発揮できるかが問題。
・ 運動とセットでないと庁内の合意と市民との合意までやりきれない。市民との協働を担っていく職員を養成するシステムがない中、社会教育主事が一番近い。
(3)区役所
・ 地域実践をしてきた職員も市民もいない中、「区役所機能の強化」というスローガンだけがはためいている。どう新しく展開できるか。
・ 大区役所制度はうまくいっていないのがほとんど。仙台も20年で何も進んでいない。大半の事務は本庁があり、独自性があるようでまったくない。公民館を移管しようとするのも「手足として市民センターがほしい」という感じ。区を基盤にした地域づくりをしていこうということ。
(4)区役所移管と講座
・ 「区役所に移管されてもそんなに変わらない」という見方があるが、実際はどうか。
・ 講座は変わる。自己規制したり、やれなくなる講座が出てきている。
・ うちの市もやれなくなってきている。だから区役所の中で社会教育主事の位置づけが定まらない。
・ うちも講座の費用が削られてきている。指定管理になった当初は開いていても、上から採算を締め付けられて講座が減っていっている。また内容も実技的なものが多くなり、教育的な面はなくなってきている。
・ 専門性があると投げかけができるし、3年くらいかかって蓄積しないと良い講座はできない。しかし区役所の中で社会教育主事の専門性が位置づけられるかというと、人事異動にある程度口を出せないとなかなか難しい状況。
・ 姉崎:一般行政は上からの行政をやりがちだ。そういう、政策遂行のための啓発・啓蒙型の学習活動に対してモノがいえるのは、一般行政とは異なる目線での、社会教育の自由を有する、住民の立場に立てる公民館職員がいるから。
・ 石井山:専門性はラインを逸脱できる力。上からのラインで来るものは、地域課題の解決ではなく、成果主義が強い。
3 まとめ
・ 姉崎:第一に、今回は図書館の人の参加が多い。合理化の中で最後までとどまることができるのは、学芸員や司書など専門職であること。公民館も社会教育主事を残していれば踏みとどまる力に。また、公民館主事が法制化されない中では各地で、(公民館)主事会が支えてきた。岡山も市民の支えが大事な力。福岡のような、職場と社教研と組合とのトライアングル(トリアーデ)が重要。現場で培ってきた人とのつながり、社会資本をどれだけ豊かにするかが大切。地教行法、地方自治法の事務委任などが使い放題に使われている。もっと攻め込む手はないか研究したい。第二に、組織パターンには取り込み型と協働型があるが、従来の駆け引きを無視した再組織型が出てきている。どう体制を作るかが大切。第三に、指定管理者。当初の導入阻止から、現在は、入ってきている中でどこまででとどめるかという第二段階。自然死・安楽死させるためには第三段階をにらんだ闘いが必要。第四に、首長がマニフェストをまとって登場する傾向が出てきている。首長の政策分析が必要。中田市長や橋下知事、河村市長などをどう見るか。第五に、自治の問題。住民自治、教育自治など自治協議会。社会教育はコミュニティを土台とした狭域自治を得意としてきたが、大都市は広域自治であり、社会教育を広域自治に移すと死んでしまう。中小都市の公民館づくり運動のフレームワークをどう大都市に生かせるか、松本のように、三者の連関を回復して「自治を作る学び」が大都市でどう可能かを考える必要がある。自治の内実をどちらが奪還するのか。教育的自治と学校区レベルの自治、区レベルの自治をどう考えるか。第六に、ユニオンの再生の時代。メンバーシップの利益だけでなく、自分の権利を守ることが全体の市民の利益を守ることにつながる。岡山のように、新たにユニオンをどう豊かに作っていくか、非正規労働者から問題が提起されている。この場はせっかくユニオンと学会が一緒にやっている。福岡のように、多様な人々が一緒に学ぶ場をどう支えていくか。私自身の課題としては、行政内部の人たちと本音で言い合える場を作るのがなかなか難しい。
・ 末本:こんな風に自治体同士が経験を交流して議論になったのは珍しい。これまでは研究者がいっぱいしゃべってきた印象。この場はある種のアクションリサーチであり、問題が複雑なときに、中に入って実際に携わっている人たちと議論しながら「問題は何か」を探る。社会教育の形が複雑に変わり、あらためて社会教育とは、社会教育職員とは何かを模索している。国大協も文部科学省がグランドデザインを作れない中、それを作ろうと必死になっている。ここもそういう場である。政権が替わる歴史的転換点という時代性を背景に、前向きなものを作れたらと思う。
・ 石井山:仕事と組合だけでなく、三つ目の柱(インフォーマルな研究会)を積極的に展開していくことが大切。
・ 今川:参加者は少なかったがお互い議論ができた。来年は鹿児島大学で開催する。社会教育学会が9月18(土)~20日(月)なので20(月)・21日(火)に開催する。
・ 横山:鹿児島出身でもあり小林平造教授とも知り合いなので準備したい。
・ 長澤:来年は職員の側から「自治体改革と社会教育ガバナンス」をレビューできるとよい。充実した議論ができた。9月25日に川崎に行くが、そこで話すヒント、視点をいろいろいただいた。市民と職員でこれからの川崎をどうしていくか議論していく参考になればと思う。ぜひ来年もお会いできたらと思う。
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