2月7日 日曜
今回は短期間の旅だった。あっという間に帰国の日となった。前日、シェフィールドから戻ると、ケビンからの文献資料の送付物を、キースがレセプションに届けてくれていた。多謝である。早速、朝の内に、今回お世話になった方々にお礼のメールを送信しておいた。
朝食後、予約しておいたタクシー待ちの時間、ホテルのロビーでくつろぐ。
今回のホテル滞在時の朝食時の世話をしてくれたのは、二人の中国の留学生であった。法学の修士学位を得た後に、法曹資格の試験を受ける準備中で、朝7時ー12時はホテルで働き、午後からリ-ズ大学に行って研究するのだという。ハルビン出身で、旧正月に故郷に帰れないけれど、資格をとってやがて中国と英国との企業関連での法律的仕事をしたいという。送りに出てこられたのはそのお一人である。彼女たちの成功をお祈りしたい。
前日に予約席を確保しておいたので、キングスクロス駅までの旅は快適であった。
ロンドンに向かう途中の車窓風景はおおよそこういう感じである。農地と時折現れる街の姿が交互に出現してくる。
キングスクロス駅に向かう特急車内で、携帯にミリアム(ミリアム・ズーカスさん)から連絡が入る。到着時間と待ち合わせ時間の確認である。会って、食事をして色々な話をしようということになっている。
プラットホーム5でミリアムは待っていてくれた。互いに再会を祝した。ミリアムとは、2008年滞在時、2009年の2月のH大での日英シンポ、同年3月のロンドンでの高等教育関連のインタビュー以来だ。僕からの片岡球子の富士を描いたカレンダーやその他の土産を渡し、僕の細君にはミリアムからチョコレートのプレゼントがあった。
入ったのは駅近くのスペイン料理店。近代的、芸術的雰囲気があり、ヘルシーな野菜魚介料理がある。
客が、スペイン各地に行った記念の葉書や絵をピンで留めて紹介している。
ミリアム(ミリアム・ズーカス教授)は、ダイエットに成功して健康的にもぐんと良くなったという。精神的にも、リーズ大学からロンドン大学バークベックカレッジに移り、社会科学、歴史、哲学の学部長を務める多忙激務職だが、同僚の関係性や刺激がたまらなく快適という。
http://www.bbk.ac.uk/sshp/depts-staff/professor-miriam-zukas
ロンドン大学バークベックカレッジは、5学部から成り、毎年17000人の学生を受け入れる、英国トップクラスの大学の一つである。現在のバークベックの学長は、日本でも著名な歴史家ホブズボーム博士である。Professor E J E Hobsbawm, CH, MA, PhD, HonPhilDr, HonDHL, HonLittD, HonDLitt, HonPhD, FBAという輝かしい経歴と著作を有している。日本語に訳されたものも多く、僕もいくつかは読んでいる。
ミリアムは、バークベックカレッジは、競争も激しいが互いに尊敬しよくそれぞれの仕事を理解しあっていることが何よりも精神的に良い。スタッフの力量の高さと人間的受容の広さ、教育的にも院生たちとの関係も良好という。
この点で、今の英国の大学及び日本の教育学関係あるいは大学改革そのもののいびつな状態は、大いなる問題である。ミリアムは、ジェプソン名誉教授の葬儀の情景、リーズ大学で起きているリストラの嵐のこと、その他の大学での人文、社会科学分野、そしてとりわけ成人教育関係での改悪動向の詳しい話をしてくれた。身につまされることも多い。他方では、希望を懐くことが可能ないくつかの研究動向や未来に向けた具体的な事例を紹介もしてくれた。
日本との共同研究のこれまでと今後のことも話し合った。詳しくは書かないが、そういう発展的な契機を大事にして関係を維持発展させようということで一致した。楽しい再会であった。親切にも彼女は送りに来てくれて、今後便利といってロンドン地下鉄のオイスターカードも買ってプレゼントしてくれた。
地下鉄のピカデリーラインはゆっくり進んだが、フライトタイムには十分な時間もあり、あとはひたすら移動時間につきあっていくしかない。
ロンドンヒースローから成田までは、帰路は11時間半である。それから乗り換えて新千歳空港経由での帰宅である。フライトは、成田までは順調であった。しかし、成田を30分遅れて飛び立った飛行機は、新千歳空港での除雪のはかばかしくない展開で、上空での1時間以上の旋回があった。しかも成田に戻るかも知れないという機長の声も緊張していた。最後に、ようやく着陸できてやれやれであった。
家にたどり着いたときには、リーズのホテルを出てから31時間が経過していた。ヘトヘトに疲れているのに、眠れないという兆候が出始めていた。どうやら、帰路の時差のズレは、体内時間の異常となって少し続きそうである。
翌日からは、大学に出向き、団交やら院入試などが待ちかまえている。しかし、そうした日常にもまれてしまわないうちに、たまっている仕事をまとめる作業を再開しなければならない。弱音など、はいてはいられないのだ。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。