この夏の僕の最大イベント、社会教育研究集会は8月25日に終わった。 しかし、その余韻をかみしめるゆとりもなく26日、27日は、仕事がラッシュ。大学の校務の会議(院入試関連他)と、指導している過年度院生の博論最終原稿へのコメント修正意見と手続きなどの指導、幾人かの学会報告論文コメントと修正意見、幾人かの院生の公募人事への推薦書書きその他などである。まったく余裕がないのは苦しい。.
体も動かしていないし、知的な生産とも言い難いし、でもこれが現実だ。 8月28日からの京都での日本教育学会 http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsse4/
参加には、早朝までいくつかの仕事が残り、ほぼ徹夜であった。という訳で、行きの地下鉄、JR、飛行機内の時間は、ひたすら眠っての移動。他人が見るとだらしない姿だったかも知れず、情けないことだ。関西地域の空港は、伊丹、関空、神戸の三つだが今回は空いていたのがたまたま神戸空港であった。事務から、神戸に何か用があるのかと聞かれたが、当然に何もない。三宮から行きは、JRで京都まで移動し、地下鉄と阪急を乗り継いで、四条大宮のホテルにチェックイン。汗だくだし、眠いしでシャワーを浴びてから、気分を変えて、会場校の佛教大学へ出向く。 理事会では、最近お連れ合いの御夫君をなくされた同じ研究分野のS先生にお会いし、お悔やみを申し上げた。「少しは外に出なくては」と話され、悲しみを抑えられている姿をお察しした。社会教育研究集会が成功したことを話して少しは喜ばれたことは良いことだった。教育学会が抱える法人化問題(人格なき社団から法人への移行)や研究組織問題、国際化対応、理事選出改革方法、等が出され、僕は、今年の北海道地域の計画を同じく同地区理事のSHさんと相談しながら報告した。 佛教大学の図書館5階のホールから見える比叡山連山の景色は雄大だ。京都の歴史がこの下に連綿と築かれてきたことがやはり感得される思いだった。
夕刻に解散。ホテルに戻った。この日は、疲れて、夕食から戻って、メールチェックや返信を書き、本を読み出したが、結局程なくダウンした。これまた情けない限りだ。 29日は、現代の若者問題を多角的にとらえる一般研究発表「若年労働市場と学校」での4本の報告と、午後のやはり同様の主題のシンポジウム「「2007年度若者の教育とキャリア形成に関する調査」結果から」を聴いた。午前は、困難を抱える若者へのエンパワーメント方策に取り組む高等専修学校、あるいは定時制高校における学校から仕事への移行支援実践、あるいはプレカリアート運動から提起されてきているベーシックインカム構想など、多様な視点が出され興味深くいくらか質問もした。起業力を小学校の授業実践に取り入れる報告もあったが、これには政府・金融庁の金融教育と同じように、経産省のビジネスモデルが前提になっており、いささか 視点の批判性の弱さを感じた。 午後のシンポは、四年をかける大がかりな調査であり、初年度の第一報告であった。調査の信頼性や枠組み検証、階層や学校のランキングでの差異性、親の階層、学歴との相関、若者の社会関係資本との関連性、正規、非正規労働との関係性、地域的相関(とくに沖縄の場合の特性)など6人の報告がなされた。調査は、まだ第一次的に検証された段階であるが、多くの質疑がなされた。僕も素朴な質問をしたが、フロアーからは多くの専門的知見が寄せられた。今後が期待される調査であり、明日から札幌に来る英国リーズ大学の研究者たちの調査とも関連する課題である。 シンポ終了後、懇親会があった。シャイというには、僕はいささか年が経ているが、何とかなく見知らぬ人が多そうな(無論知り合いも多いのだが)中での、社会的コミュニケーション(社交ともいう)に、いつもの苦手意識虫が働き、遠慮した。 30日は、午前に「高等教育政策と大学の自己変革-大学改革における学長の役割に関する比較史研究の試み-」の4本の報告を聞いた。シカゴ大学の事例研究が二本(創設期、およびハッチンスの功績評価)、戦後改革期の東京商科大学(上原専禄)と東京工業大学(和田小六)の実学派大学学長が目指した改革構想の再吟味、さらに北京大学改革に果たした蔡元培の役割検討という部会である。 上原・和田の検討を行ったTさんは、前に名大に集中講義に行った際にその研究室の院生であってお世話になった。数年前に、k大学に移ったが、誠実な努力家である。大学改革における学長の役割に関する比較史研究の試みという副題であるが、現代の民間経営手法の導入、ACADEMIC CAPITALISMの動きなどを考えたり、英国などのタイプの異なる統治システムの違いなどを考えると、ドイツモデルと米国モデルを基本とするだけでは、まだ枠組み設定が甘いようにも思えたが、僕は報告をしていないので無理に発言することは控えた。 午後は、公開シンポジウム「中国における教育改革と教育学研究の現状と課題」に出たが、4人の中国を代表する論者の報告を聞いただけで、飛行機の時間もあり退席した。僕自身は、昨年の北京師範大学での講義もあって、興味深いものであったが、長くいることができなかった。詳しくは、ここでは内容に触れないが、現代の中国の研究者意識や方法・関心が伺えて面白い。日本側のコメントも聴きたかったがかなわなかった。遠方地故の不利益である。帰路は、ホテルで荷物を受け取った後、阪急で移動、神戸ポートライナーで移動するときに見える海面は灰色で、貨物船の移動が激しい。全国的に、この数日は局地的豪雨だったようだが、帰路の飛行機も乱気流のせいか、大いに揺れた。帰宅は、21時半過ぎ、待ち時間もあったが、7時間半の移動はいささか疲れるものだ。 中国からの報告者の面々。佛教大学は、いまや総合大学だ。
8月はこれで終わりだ。 明日からは、また別の忙しさだ。
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